これは日本でもニュージーランドでも同じですね。
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風邪になったら医者にかかるべきか
結論から言うと、風邪はウイルス感染なので、治療という意味では医者は何もできません。
ただ症状が悪化したり、小さな子供でご両親が心配している場合は、医師のチェックを受ける意味はあると思います。
患者さんの風邪の治療に対する理解、期待
抗生物質は効くの?
抗生物質は風邪には効きません。
ニュージーランドでも日本と同じで、明らかに単なる風邪でも、General Practitionerの診察を受けに来る人は多いです。
こういう患者さんは
- 「風邪という病気」に関する理解度が低い、か
- 医療に過大な期待するしている
と言う事が多いです。
中には、自分が前回同じ症状で抗生剤を飲んだら、すぐよくなったという経験や、周りの人の「抗生剤をもらってきたほうがいいよ」といったアドバイスで誤解が生じたという事もあります。
と私が説明した後に
と質問する患者さんは結構います。
説明しても納得しない患者さんもいます。
そういう患者さんには私は説明をした後、抗生物質の処方箋(back pocket prescriptionと呼びます)を渡して
と言っています。
まあ医者の自分が、抗生物質が要る事を信じていないのに、処方箋を出す、というのは矛盾しているのは、自覚しています。
ただ私の経験から言って、抗生物質を最初から要求しているの一部の人は、数分かけて話をしても納得しません。
こういう患者さんの場合、風邪が良くなるのに時間がかかった時、
「あのGPは私の話を聞いてくれず、抗生物質を出してくれなかったので、週末に救急のクリニックに行かないといけなかった。そこで抗生剤をもらってすぐに良くなった。」
という事になり、余計に『風邪には抗生剤が効く』という誤解を強くすることがあります。
それを避けるために、GPの私はある程度の妥協をする訳です。
私が5−6年前に自分のクリニックで調査した結果では、back pocket prescriptionをもらった人の中、半数の人は抗生物質を使用していませんでした。
国立国際医療研究センターの意識調査
日本の患者さんや医師の風邪と抗生物質の知識に関して、興味深い調査結果をウェブサイトで見かけました。
以下は読売新聞の医療ウェブサイトから内容の引用しました。
" 国立国際医療研究センターは2018年2月、インターネットを通じて、行った一般の人を対象とした意識調査では、回答者3192人のうち、43・8%が、抗生物質は風邪やインフルエンザに効くと誤解していたとのこと。
また風邪に抗生物質を処方する医師を良いとした人は33・3%に上ったということで、患者さんが風邪の治療に対してどのような誤解をしているのかがわかります。。
このウェブサイトには、日本化学療法学会と日本感染症学会は2018年2月、診療所の医師を対象に調査をした結果も載っていました。274か所から得た回答を得て、その医師の6割は、風邪の患者や家族が望んだ場合、抗菌薬を処方すると回答しました。(内訳は「希望通り」が12・7%、「説明しても納得しなければ」が50・4%)。"
ニュージーランドでの同様な調査結果は入手できませんでしたので、比較はできません。
多分患者さんの意識は、ここニュージーランドでも同じ様なものだと思います。
ただ、ニュージーランドの医者の風邪に対する抗生物質の処方に関しては、処方率はもう少し低いのではないかと思います。
風邪薬は飲むべき?
風邪薬を使用することで、風邪自体の治療にはなりません。
ただ、不快な症状の緩和と副作用、薬のコストを天秤にかけ、風邪薬を使う価値があるとご自分で思われれば、使用することに問題はありません。
(もちろん持病のある方などは、医師や薬剤師にアドバイスを得てくださいね。)
日本の場合
日本では、患者さんが風邪で医者にかかると、PL配合顆粒のような風邪薬が処方されることが多いと思います。
日本の開業医は薬を処方すると診療報酬が増えますし、医者の助けを求めてきた患者さんに何にもしないのは申し訳ない気持ちから、ニュージーランドより風邪薬を積極的に処方することが多いと思われます。
ただ、日本でもPL配合顆粒のような風邪薬は処方箋なしでも購入できます。
実際に患者さんが払う料金は、医者にかかって、PLの処方箋をもらい薬局から入手するより、直接患者さんが薬局から買ったほうが安くつくようです。
これで日本政府の払う医療費の節約にもなります。
ニュージーランドの場合
ニュージーランドでは、診察時に処方箋を出しても、医者の収入がその分増えることはありません。
患者さんにとっても、風邪薬は処方箋の有無で薬代は変わらないので、風邪薬の処方箋をわざわざもらう理由がありません。
(例外的に、少し安くなるうがい薬がありますが。)
アセトアミノフェン(パラセタモール)のような鎮痛剤は、ニュージーランドでは処方箋により安くなりますので、診察時にGPに頼めば処方箋をもらえます。
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風邪の予防に役立つ方法は?
役に立ちそうなものをリストしています。
手洗い
基本的に風邪は、他の人のウイルスが自分の体内に入ることで、感染が始まるわけなので、このステップが起こらないようにすれば風邪にはかかりません。
手洗いが上気道感染の頻度を減らすというスタディーは幾つかあります(参考文献1、2)。
大切なのは充分時間をかけて、できれば石鹸を使って手を洗うことです。
うがい
これも手洗いと合わせて特に日本では推奨されています。幾つかのランダマイズド トライアル(参考文献1、2)で有意差が出ているものがあるようです。
うがいをするのには特にお金もかかりませんから、頻繁に手を洗ってうがいをするという習慣にすると良いと思います。
(私は一人の患者さんの診察が終わった後には、常に手を洗ってうがいをしています)
Vitamin C
2013年のコクラン・レビュー(文献)ではビタミンCは風邪の予防や感冒症状の緩和には役立たないと結論しています。
ただ毎日ビタミンCを摂取しており風邪をひいた場合は、罹患期間が8−18%短くなる可能性あり。
またマラソンランナーのようにかなり身体的要求が高い運動をしている人は、毎日ビタミンCをとることで風邪にかかる頻度が少なくなる可能性があるとのこと。
ただ摂取量は少なくとも1g/日、大人では6−8g/日とかなりの量が必要です。
亜鉛入りのトローチ・シロップ
2011年コクラン・レビュー(文献)は、「亜鉛(トローチまたはシロップ)は、症状が発現して24時間以内に摂取すると、健康な人の感冒の期間と重症度を短縮・軽減するために有益である」と結論づけています。
ただ、その後2013年ののレビューでは、『有効であるかもしれない、と結果づけられたスタディーで使われた亜鉛の摂取量は80−90mgと普通の食事からの摂取量に比べるとかなり多量であるため、副作用と効果の兼ね合いを考えないといけない』となっています。
私が日本のウェブサイトで検索してみたところでは、数mgの亜鉛が入っている飴はありますが、この量で風邪の予防や症状の早期緩和に役立つかどうかは疑わしいですね。
マスク
日本では風邪の季節にはマスクはおなじみですが、こちらニュージーランドではマスクをかけて街を歩いている人は見ることがありません。(アジアからの観光客は別です。)
ではマスクは風邪の予防に効くのでしょうか。
マスクには昔ながらのガーゼ素材のものから、紙のような不織布のものまであります。実はどれを取ってもマスクの網目が大きすぎるため、大変小さいウイルスの侵入を抑えることはできません。
マスクが風邪の予防に有効であるという証拠は無いようです。
ただ自分が風邪をひき、どうしても仕事をしないといけない時には私もマスクをすることがあります。患者さんに自分のつばがかかったりしないようにと言う意味なのですが、結局ウイルス自体はマスクを通して外へ出るので、どれだけ意味があるのかは、不明です。
冬に風邪にかかることが多い理由の一つとして、 気温、体温の変化が免疫機能に関係するという研究結果があります。
Ellen F. Foxmanら(2015年)によるこの研究では、体温の低い部分ではある種の免疫機能が低下することが示されています。鼻の体温は体幹の体温より低く、肺などの体温が高い部分に比べると、ウイルスの複製を抑える免疫力が弱くなりことが示唆されています。
鼻や口の温度を高めるという意味では、マスクも意味があるかもしれませんが、明らかにする場合としない場合で有意差が出るほどでは無いでしょう。
マスクを予防の意味でつけたい方は、同じマスクを続けて使わないように気をつけてください。
マスクの表面にはウイルスがついている可能性がありますから、1日のうちに数回は変えてください。
却って、マスクの使用がウイルス感染につながる可能性が無きにしもあらずです。
エキナセア
免疫力を高めると言われているエキナセアですが、風邪の予防には効くのでしょうか。
残念ながら、エビデンスは無いようです。
にんにく
これも十分な根拠は無いようです。私の患者さんで、にんにくのサプルメントを飲み始めてから一度も風邪を引いたことが無いと言っていた人がいたのですが。
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まとめ
- 単なる風邪だと思ったら、医者にかかる必要はない。
- 仕事、学校は休み、体を休ませ、他の人へ感染を広げることを避ける。
- 抗生物質は効かない。
- 必要なら風邪薬を症状緩和のためにとるが、通常は医者にかかって風邪薬を処方してもらうのは医療費の無駄。(ただし、症状の悪化などで心配な場合は、医師にかかることを勧めます。)
結局、風邪を防ぐために根拠がありそうなことは、
手洗い、うがいを頻繁に洗うことのみのようです。
風邪のウイルス感染した人は、鼻水や咽頭痛の症状が出る1日前には、すでに他の人への感染能力を持つということなので、周りに風邪の症状を持つ人がいないからといって、安心はできません。
特に家族や会社の同僚、友達で風邪を引いている人がいたら、接触を出来るだけ少なくして、かつ手洗い、うがいを頻繁に行う必要があります。
もしも運動選手やそれに近い強度の運動をする人なら、高レベルのビタミンC摂取に効果がある可能性あります。ただ普通の食事から取れるビタミンCの量では足りないので、サプルメントが必要だと思われます。高いお金を出して、サプルメントを買う価値があるかは疑わしいです。
(もちろんそれぞれの人が、自分の信ずる予防法、治療法があればそれに従ってもらうのに反対する気はありませんが。)
とにかく、今年の冬も出来るだけ風邪をひかずに過ごしたいと願っています。