もちろんストレスだけでなく、言葉の壁は良い医療を受ける妨げとなります。
私の患者さんでも、全く英語が喋れず理解もできない方が、一人でいらっしゃることが、しばしばあります。
全く英語が理解できないのならば、ある意味でそれは明確なのですが、中には少し理解できて、私が説明するとニコニコして頷いているのに、最後に「じゃあ、どうすればいいのかわかりましたか」と訊くと、実は全く理解できていなかったという人もいます。(英語を話す患者さんでも、このような方はいらっしゃるのですが.)
では患者さんとしてGP、または病院の外来を受診する時に、より良い医療を受けるためにできることは何か。
今回はGPの私が、英語の苦手な方に捧げる6つの戦略です。
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GPに相談したい問題を一つに絞る。
これは英語をしゃべる人も同じなのですが、GPにかかる時に、5つも6つも問題のリストを持ってくる人がいます。
通常のGPのコンサルテーションの時間は15分なので、とても5つの問題について話し合い、所見を取り、計画を立てるのは無理です。
これがまた言葉が通じないと、意思の疎通に2倍近くの時間がかかりますので、とても複数の問題を15分でカバーできないことは、お分かりになると思います。
結局、一つ一つの問題を深く掘り下げられずに、診療時間が終わってしまいます。
できれば、問題は1つ、多くても2つまでにしましょう。
それ以上問題がある場合は、ダブルアポイントメント(30分のアポイントメント)をとるか(通常は2倍近くの診療費が請求されます)、日を改めて受診する様にしましょう。
英語と日本語がよくできる人(できれば家族)にあらかじめお願いしておいて、診療中に携帯電話を使って通訳してもらう
もしくは
英語と日本語がよくできる人に一緒についてきてもらう
私は携帯電話を使ったほうが好みなのですが、そうでなければ、実際に誰かにGPクリニックについてきてもらう、と言う方法もありです。
携帯電話を使えば、通訳をする人は、患者さんと一緒に待合室で待っている必要はないので、通訳する人の時間の節約になります。
私が携帯電話を介した通訳を好むもう一つの理由は、通訳の人(通常は家族や友達など)が実際に診察室にいると、患者さんと二人で私の理解できない言葉で話を始めてしまうことがあるからです。
もちろん私が理解できる言語なら、どこで会話の邪魔をしていいかわかるのですが、そうでないと大切なことを話しているのかどうかわかりません。
日本語を理解しないニュージーランドの医者にとっても、短い診療時間に、医者にはわからない話を日本語でされるのは、診療の役に立ちません。
私が家族が通訳してくれるのを好むのは、患者さんにいろいろな計画を伝えてもらう際に、もちろんその家族にも説明することになるので、特に高齢の患者さんの場合は次の計画がどのようになっているのかを、いちいち紙に書いたりしなくても済むからです。
(もちろん、家族には知って欲しくない医学的問題のこともあると思うので、いつも家族に通訳してもらうというわけには行かないかもしれませんね。)
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無料の通訳サービスの電話番号を控えて行く
無料の医療通訳サービスもあるのですが、あまり頻繁に使うものではないので、その電話番号をGPが探して繋ぐまでに時間がかかるので余分に時間が取られます。
ただ一度ラインがつながれば、非常に便利です。
こちらのお住いの地域から使える、無料の通訳電話サービスを載せておきます。
最初からこれを控えておいて、GPに伝えると無駄な時間が取られません。
また、GP受診を予約する時、または病院の外来受診の前に「どうしても日本語と英語ができる通訳を都合できない」ことを、あらかじめ伝えておくと良いと思います。
上のリンクを開くと、どのような団体がLanguage lineと契約しているかわかります。GPにかかる時は、自分が加入しているPrimary Health Organization(PHO)をリストの中に見つけるか、自分の入っているPHOが見つからない時は地域のDistrict Health Board (DHB)を見つけてください。
PHOとかDHBとか、何のこと?という方はこの記事"DHB、PHOって何?”を参照にしてください。
Language lineは医師を受診時だけでなく、電話でのヘルプラインや、カウンシル、IRDなどいろいろな政府関係の機関を使う際も通訳してもらえるので、英語が苦手で役所に行くのも気が思い、と言う方はぜひ利用してください。
*2019年9月末でlanguage lineのサービスが終わります。
その代わりにEzispeakという団体が、通訳の仕事を引き継ぐらしいです。
『より良いサービスを』という事ですが、GPクリニックから直接にアクセスできなくなるかもしれません。政府がお金を節約して、GPクリニックに負担を強いる、という動きの一つのように思われてなりません。
2.各地域の通訳サービス
このHealth Navigatorの記事によると、Language Line以外にもAuckland DHB、Counties Manukau DHB、Waitemata Aucklandには独自の通訳サービスがあるようです。
私が住んでいる地域の Northland DHBにも、私の知り合いの日本人の方が「通訳として登録している」と言っていらっしゃったのを思い出しました。病院に入院した時などは、通訳としてだけでなく、自分の言葉でいろいろ相談できるのは、ありがたいですよね。
英語で誰かに問題をあらかじめ書いておいてもらう
この方法は、どうしてもご自分で通訳が用意できない時に役に立ちます。
どんな症状がいつからあり、何が心配で、何をしてもらいたいと思っているか、などを書いてGPに渡してもらえると、かなり助かります。
まあまあ英語が理解できる方なら、私はゆっくり英語で説明しつつ、Google translateを使って理解しているかを確認します。(上手に使えば本当にGoogleはありがたいです。)
私は最後に英語で計画を書いて、本人にもそれを読んで納得してもらいます。
また、患者さんの理解度が疑問な場合は、英語がわかる家族の人にもその紙を見せるように患者さんにお願いし、本日の診療の結果、次の計画がどうなのかを患者さんに完全に理解してもらいます。
わからないことは質問する
医者の説明がわからないのは、恥ずかしいことではありません。わからなかったら、ちゃんとわかるまで訊いてください。
何度も訊きなおすのは、フラストレーションがたまると思いますが、わかったふりをしても何も得することはありません。わかるまで質問してください。
ただ(うまく説明できなかったなあ)とか(医師に理解してもらえたかどうかよくわからないなあ)と思われるなら、次回はもう少し用意して(通訳なり、英語での説明文なり)受診に臨みましょう。
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最後に
ニュージーランドでは、人種に関わりなく、すべての人が同じレベルの医療が受けられるように努力しています。
それが国の医療の目標の中に挙げられています。
私たちニュージーランドの医療従事者はその目的を達成するよう努力しています。
患者さんとなる皆さんもできるだけの努力をしていただき、みんなで医療の質を上げていけたら素晴らしいことだと思います。