正解ですね。
この辺りは、世の中のどんなものでも同じですよね。
薬を作るのにかかった費用よりも、価格を高くしないと元が取れないですものね。
これも正解ですね。
特許をとった薬は、その特許が切れるまでは独占状態ですから、値段を操作できます。
特許が切れてジェネリックの薬(いわゆるゾロ薬)が出てくると
値段を下げないと、他の会社との競争に負けてしまいますからね。
実は、薬の値段の決定に関わるのは、これ以外にもいろいろな要因があります。
そして、日本とニュージーランドでは、かなりこの薬の価格の決まり方も違うのです。
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日本ではどのように薬価が決まるの?
日本での薬価の決められ方は、この厚生労働省の資料 『日本の薬価の決め方』にまとめてあるので、参照にしていただきたいと思います。
ただ、こちらの『Answers New Plus 』というサイトは、もうちょっと噛み砕いて書いてあり,、厚生労働省のサイトより理解しやすいと思います。
以下に、もう少し端折った概要を書きますね。
日本では、新しく薬が出た時、国が薬自体の承認の話し合いをするのと並行して、製薬会社が売りたい価格を提出します。
これは『薬価基準収載希望書』といって、医薬品の特徴や、会社が希望する薬価とその根拠、予測投与患者数などを記載したもので、これが薬価を決める基礎資料の一つとなります。
薬の値段については、
- 画期性(新規の作用機序、高い有効性・安全性、疾病の治療方法の改善がある)
- 有用性 (高い有効性・安全性、疾病の治療方法の改善がある)
- 市場性(希少疾病用医薬品である)
- 小児に関わるかどうか(用法・用量に小児に係るものが明示的に含まれている)
により、価格が加算されます。これを補正加算と言います。
類似薬がない新薬
類似品がない薬は、原材料費、研究費、営業利益などを積み上げた、「原価計算方式」が使われます。
つまり、製薬会社が申告した原材料費や製造費などの原価が、大きく考慮されるわけです。
製薬会社の開示を促すために、製薬会社が、この原価をどれだけ開示したかによって、いろいろ補正加算される金額が変わっていきます。
つまり、『製薬会社が正直に原価をほぼ開示すれば、補正加算を全部つけてあげますけど、開示しなかったら補正加算はあまりつけられませんよ』と言う感じです。
その他に、海外(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)でどのくらいの値段で売られているか、も考慮されます。
類似薬がある場合
類似薬がある場合は、「類似薬効比較方式」といって、すでにある薬と1日分の薬価が同じになるように、薬価が設定されます。
すでに類似薬が3つ以上存在している新薬の場合は、過去6年、または10年の類似薬の値段を調べて、そこから薬価が決まります。
日本では患者さんが払う薬代はどう決まる?
ただ、この時に費用に入るのは、薬の値段だけではありません。
以前に調剤薬局からもらったレシートを見て、気がつかれた人もいると思いますが
「薬剤料」の他に
- 「調剤技術料」
- 「薬学管理料」
- 「医療材料費」
などの費用が、載っています。
つまり、薬代以外にも、薬の処方に関する他の費用も薬局へ払うことになります。
薬局は、患者さんが払った3割以外の費用を、保険支払い機構へ請求して、支払いを受けます。
公式の薬価とは言っても、いろいろな裏がある
病院やクリニックは、実際は製薬会社と交渉して、公式の薬価よりも安い値段で買い入れることが可能です。
そうすると、病院やクリニックから薬を処方することで、仕入値と公式の薬価の差額が、病院の利益になります。
もちろん、病院やクリニックから薬を出せば、薬剤師を別に雇う必要もあり、必ずしも丸儲けではないのですが。
まあ、こんな裏事情もあるんです...
ニュージーランドでは薬価はどう決まる?
ニュージーランドにはPharmacという政府の組織があります。
このPharmacが薬価の決定に大きく関与しています。
ニュージーランドと日本の薬に関するシステムの大きな違い
ニュージーランドと日本では、薬に関しては非常に大きな違いがあります。
一つは、Pharmacが患者さんのためにそれぞれの薬の資金援助(funding)するか、しないかを決めるということ。
(部分的に資金援助(partially funded)というのもあります。)
もう一つは、政府のfundingがあるものは、患者さんは薬価にかかわらず、GPや公立病院医師からの処方箋があれば、1つの薬につき3ヶ月分までを$5のco-paymentを払って、手に入れられると言うことです。
(経口避妊薬は最高6ヶ月分まで1枚の処方箋でもらえて、これもco-paymentoは$5です。)
13歳以下は、医療費だけでなく、薬代も無料です。
もしもprivateの専門医に診てもらい処方箋をもらった場合は、薬局で払うco-paymentは$15になります。
例えば、薬価が3ヶ月分で何百ドルもする抗がん剤であっても、3ヶ月分の薬価が数ドルしかしない、痛み止めのパラセタモール(アセトアミノフェン)でも、患者さんが薬局で払うのは$5なので、これは日本とかなり違いますね。
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Pharmacはどの薬をfundするか、どうやって決めるの?
Pharmacがどの薬をfundするかは、主に次のような要因を考慮して決められます。
- 必要性ーその薬が効く病気・病態はどんな影響を人々に与えるのか
- 効果ーその薬の効果、副作用はどのようなものか
- コスト・費用の節約ーその薬をfundすることでどんなコスト・費用の節約が起こるか
- 適合性ーその薬を投与される患者さん達にとって、薬が摂取しやすい大きさ、形、味であるか
これらの要因を、個人、家族や社会、国のシステム全体、という3つのレベルでさらに検証して、最終的な決定をします。
その過程では、医療従事者以外の国民のフィードバックも取り入れたりしています。
ニュージーランドでは薬価はどんな意味を持つわけ?
こんなに日本とは違うニュージーランドのシステムですが、
では公式薬価というものは、どのような意味を持つのでしょうか?
公式薬価は、薬局からその薬が処方された時、公式薬価に沿って製薬会社にはお金が入るという前提の価格です。
ニュージーランドではこの公式薬価は、Pharmacが製薬会社と交渉することで決まります。
交渉の仕方もいろいろあって、まだ特許が有効な薬については製薬会社との交渉、特許が切れてジェネリックが出ている薬は複数の製薬会社からの入札制をとったりしています。
同じ会社の他の薬とまとめて交渉したり(例えばあなたの会社のこの古い薬をfundするから、こちらの新薬の価格を下げて、と交渉したり)、病院で多く使うfundingを受けた薬は、公正薬価は下げないけれど、製薬会社からリベートのお金をPharmacに渡し、事実上薬価を下げた形でPharmac、つまり政府がお金を節約できるようにしたりします。
このリベートなんて面倒臭い事をするのは、公の薬価をあまり下げたくない、という意図があるようです。
公の薬価が下がると、例えばA国が、この薬のニュージーランドでの価格を参照した時に、「こんなに値段下げれるじゃないの!」ということになって、A国での薬価も下がってしまう、ということを避けるためのようです。
こっちの国で薬価を下げれるなら、そっちの国でも下げられるでしょ、と私は思うのですが。
なんか裏でいろいろあるようで、すっきりしないですよね。
ニュージーランドのニュースサイトStuffにも”Who knows the true cost of medicines?”という記事がありました。興味がある方は読んでみてください。
まあ、とにかくPharmacはいろいろな手を使って、ニュージーランドの住民に必要な薬が、できるだけ多くの国の医療費を使わずに入手できるように努力しているわけです。
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ニュージーランドと日本で、よく使われる薬の薬価比較!
ここで、ニュージーランドでも日本でもよく使われる薬の薬価を比較してみましょう。
アトルバスタチンという薬があります。
コレステロールを下げるスタチンという種類の薬の中で、代表的なものです。
日本での先発薬はリピトール。
日本でのアトルバスタチンの値段を見てみましょう。
(メディカルオンラインという医療従事者向けのウェブサイトを参照しました。
どうして日本は、”医療従事者だ”と宣言しないと見れないサイトがたくさんあるのか、不思議です。別に、非医療従事者に何も隠すことは何もないと思うんですが。)
(先発薬)リピトール 10mg 88.2円/錠
(ジェネリック)アトロバスタチン錠10mg(武田) 45.7円/錠
(ジェネリック)アトロバスタチン錠 10mg(トーワ) 37.2円/錠
(ジェネリック)アトロバスタチン錠 10mg(サンド) 24.4円/錠
ではニュージーランドでは、どうでしょう。
ニュージーランドでは先行薬のLipitorはfundingを受けておらず、手に入れたくても入らないかもしれません。
fundingを受けているのは、ジェネリックのLorstat。
気になるお値段は.....
(ジェネリック)Lorstat 10mg $6.96 (507円ぐらい)/ 500錠 =1円強/ 錠
えっ?この差は何?😱
ちょっと目を疑います。
この薬だけ、特別だったのかもしれない....
では抗鬱剤を見てみましょう。
セルトラリンという日本でもニュージーランドでも使われている抗うつ剤です。
先発薬はジェイゾロフトです。
(先発薬)ジェイゾロフト 50mg 147円/錠
(ジェネリック)セルトラリンOD錠(アメル)50mg 52.1円/錠
(ジェネリック)セルトラリン錠(ニプロ)50mg 39.2円/錠
さあ、ニュージーランドでの薬価は?
ニュージーランドではジェネリックしかfundingを受けていません。
(ジェネリック) Arrow-Sertraline 50mg $3.05 (222円)/ 90錠 =2.47円/錠
この日本とニュージーランドの薬価の違いを、どなたか説明してもらえないでしょうか。
ジェネリックでも、こんなに値段が違うのはなぜ❓❓❓❓❓
日本では、どれだけ国民が製薬会社に余分にお金を払っていることになるのでしょうか?
ジェネリックを使うとあなたと国の医療費が節約できる
ジェネリックとは何でしょう?
「ジェネリック」という単語の意味自体は「ブランドでない」「一般的な」という意味ですが、医薬品の世界では、新薬である「先発薬」の特許が切れた時点で発売される「後発薬」のことを意味します。
「先発薬」と「後発薬」は基本的に同じ成分で、同じ効能を持つ、とされています。
ただ、「後発薬」は開発費の元を取る必要がなく、その他にも競争相手の会社がたくさんある状態になるので、薬価は「先発薬」に較べ、かなり安くなります。
「先発薬」と同じ成分のジェネリックの「後発薬」が作られ、販売される経過では、いろいろな試験を経ます。
「後発薬」が投与後に、「先発薬」と同じような血中濃度になるか、効果は同じかとか、副作用はどうかなどがチェックされます。
「後発薬」は「先発薬」は”ほとんど同じ”ですが、100%完全に同じではない可能性はあります。
私の患者さんでも、「なんかジェネリックに変わってから、調子が悪い」とか「薬の効きが悪いと思う」とかいう人がたまにいます。
多分、違いを感じる人もいるんですよね。
でも、ずっとそういうことを言い続ける人はほとんどいないので、
私は(ブランド品から安いジェネリックに変えられた)と患者さんが感じることによる”プラセボエフェクト”が大半なのではないかと思います。
ただ、てんかん薬や甲状腺ホルモン剤、などは「先発薬」からジェネリックに変える時は、他の薬よりも慎重に行います。
ニュージーランドではジェネリックを使う選択肢しかない時もある
ニュージーランドでは、ジェネリックが出た薬は、基本的にジェネリックがfundingを獲得します。安いですからね。
「先発薬」が高いお金を払えば手に入れられる場合もありますし、
「先発薬」を手に入れることもできない、という場合もよくあります。
日本にはPharmacのような機関がないので、安いジェネリックだけを市場に残すとかいう操作はできないです。
ただ、日本では2008年に規則が変わり、処方せんに「後発品に変更不可」欄に医師がサインしなければ、患者さんと薬剤師さんの話し合いで、ジェネリックを使えるようになったようです。
例えば医者が
『ジョイゾロフト 50mg 1日一錠』
という処方せんを書いて、もしも「後発品に変更不可」の欄に医師がサインしていなければ、患者さんが処方せんを薬局に持って行った時に、ジェネリックのセルトラリンをもらうこともできるわけです。
日本人のブランド志向も関係しているのかもしれませんが、医師でもまだ先発品に強いこだわりがある人が多いようです。
(薬局自体の収入はどうなのでしょうか?私はよく知らないのですが、薬価の高い薬を勧めたら、その分収入が多くなるようなシステムだったら、もちろん薬剤師さんもあまり積極的にジェネリックを勧めないかもしれません。
この辺りを、ご存知の方がいらっしゃったら、教えてください。)
ジェネリックを使えば、医療費を抑えられる
前述の、アトロバスタチンとセルトラリンについての比較のところで書いた、日本国内での先行薬とジェネリックの値段を見てください。
ジェネリックだと、日本で売られている同じ薬でも、「後発薬」は「先発薬」の1/2から1/3の価格、薬によってはもっと安くなっていましたよね。
ということは、ジェネリックを使えば、あなたの薬代も1/2以下になります。
日本国民みんながジェネリックを使えば、日本の国の薬剤医療費が1/2以下になりうる、ということです。
先発薬にこだわるお医者さん。
処方箋を書くときに、少し考えてみませんか。
どれだけ根拠があって先行薬にこだわっているのか。
先行薬にこだわる患者さん。
もしも医者に勧められた、と言うだけであれば一度ジェネリックを使ってみてはどうでしょうか。
ジェネリックに変える時は、薬局でお試し期間を設けてもらい試すこともできます。
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最後に
薬の値段って、とてもグレーだという思います。
同じ薬が国によって、こんなに違うということがなぜ起こるのか、私には理解できませんが、私の力ではこのブログを書いて、みなさんに実情を知ってもらうぐらいしかできません。
(日本でもPharmacのような機関を作って、製薬会社同士をもっと競争させたら、薬価が下がり、医療費もかなり下がるのではないでしょうか。)
とにかく、政治家ではなくGPである私が思うこと。
1. ジェネリックの薬が使えるときは、ジェネリックを使おう。
2. みなさんが健康に気をつけて、生活習慣病になるのを避け、薬を飲む必要がなくなるように努力しよう。
あなたが健康であれば、あなたの医療費だけでなく、国家の医療費も減らせるのです。
私達が、私達のためにできることをやっていきましょう。