ニュージーランドで働けたら、どんなに給料が低くてもいい!!
こんな人もいるかもしれません。でも、真剣にニュージーランドに移住して医師として働こうと思っている人は、見込まれる収入について興味があると思いますので、まとめてみました。
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研修医
研修医達は New Zealand Resident Doctors’ Association (NDRDA)という、とても強い団体によって守られています。(労働組合のようなものです。)
NZRDAはトレーニング中の勤務医達の労働条件、給与など様々な事を、雇用主であるDistrict Health Boards (HDB) と交渉します。
その結果、研修医達の給与は合意された一定の基本給を元にして払われます。
何年かに一度は、研修医たちのストライキがあります。これはRDAが出した給与などの条件をDHBが承諾しなかった時に起こります。
日本にもRDAみたいな団体が欲しかったですね。私の研修医の時は、本当に薄給でしたから。
実際にRDAの作った書類を参照にして、研修医達の給与を見てみましょう。
House Officer (卒後1年目と2年目)
これは、ニュージーランドの医学部を卒業した後やNZREXに合格した後の仮免期間です。
2年間病院内の各科をローテートし、充分な評価をそれぞれの科から貰うと、次のSenior House officerの段階に進めます。
オークランド、ウェリントン、クライストチャーチなどの都市部と、そうでない地域で働く研修医達では給与に少し差があります。
次の表は都市部のHouse Officer 1年目と2年目の給料です。(NZRDA and 20 DHBs Multi Employer Collective Agreement 1/4/19 to 31/3/21から引用。2019年度と2020年度の基本給が載っています。)
次の表は私が働く地域(都市部でない)でのHouse Officer 1年目と2年目の給料です。(同じ資料から引用)
年が上がるごとに給料が上がり、また一週間に働く時間が多いほど(当然)給料が上がります。
大都市で働く研修医の方が、そうでない地域で働く研修医より給与は低くなっています。
これには30日/年の有給休暇、30日/年の有給の病欠などが含まれています。
1週間に55時間働いたとして、1年目の研修医だったら660万円/年程度。4年目には同じ780万円/年程度です。(NZ$1 = 74円として. 現在のレートは異なると思いますが。)
私が日本で研修医だった頃(30年前...)の給与はこれよりかなり低かったと思います。休暇なんかほとんど取った覚えはないです。(一応有給はあったのかなあ。)
現在の日本では研修医の待遇は改善されて、ニュージーランドと同じ程度になっていると良いのですが。現役の方がいらっしゃったら、教えてください。
Registrar
これは専門の科を選択している研修医で、日本でいるところの後期研修にあたります。これから始まる日本の「専攻医」というのも同じようなものですね。
例えば、外科のトレーニングは4ー6年で、例えばその後もっと専門性のある科 を希望すれば、さらに数年のトレーニングをする、という形になります。
現在ニュージーランドのGPのトレーニングは3年で、初期研修2年を終えた時点で、GPのトレーニングに入る事が可能です。
という事は最短卒後6年目で、GPの専門医試験を受ける人もいるという事ですね。
さて、以下が都市部で働くregistrarの基本給です。
こちらは非都市部で働くregistrarの基本給です。
(これも、上記資料から引用。)
もしも卒後2年で外科のトレーニングに入り6年研修したとします。
その6年目にもらえる給料は、一週間に55時間働いたら、基本の年収は930万円ぐらいです。(NZ$1=74円として)
"Year 10"といえば 卒後12-14年目ぐらいなので、その頃にはほとんどの医師は後期研修が終わって、自分の所属する学会の専門医 Fellowになり、病院ではconsultantになるため、給与はこのRDAの表には従いません。
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専門医
公立病院に勤務するConsultant
公立病院に勤務するconsultantになると、今度はAssociation of Salaried Medical Specialists (ASMS)という団体に守られ、基本給がDHBと交渉されます。
以下が週40時間のフルタイムで働くconsultantの基本給です。(ASMSのウェブサイトから引用)
10年目のconsultantで日本円にして年収、1540万円ほどです。
これには6週間/年の有給休暇、14週間までの有給のparental leave、有給の病欠などが含まれています。
勤務医であるので、年金の掛け金も職場が自分が払った分に見合った額を入金してくれます。
General practitioner
これらに較べて、GPの収入はどうでしょう。
基本的にGPはクリニックのオーナーか、”自営業”で、クリニックと”契約”を結んで、働いています。
”自営業”でクリニックから報酬が払われる場合は、収入の中には政府に払わないといけない15%の消費税も含まれています。(=クリニックから消費税込みで給与が支払われるので、その消費税分は政府に払い戻します。結局は、振り込まれた給与から15%引いた値が、所得税支払い前の所得額になるという事です。)
ではGPの収入をGP学会のアンケート調査結果から見てみましょう。
GPの平均勤労時間は、この調査によると35.2時間/週でした。
上の病院に勤める専門医の基本給は40時間/週なので、それよりも少ない事になります。
ただし、この辺りの時間の数え方が難しいところで、患者さんを診ている時間だけでなく、GPはペーパーワークをしている時間がかなりあります。
勤務医の様に、給料を払われている病院勤務時間内にペーパーワークをすれば、もちろんその時間に対して給料が払われている事になりますが、多くのGPは自宅へ帰ってからとか、診療時間外、仕事が休みの日などにペーパーワークをするので、その辺りをどの程度それぞれのGPが正確に申請しているのかは疑問です。
もう一つ覚えておきたいのは、GPには通常、病院勤務医が与えられる有給休暇、有給の病欠、学会参加費用のカバーなどの特典がない、という事です。
年金の掛け金も、職場からの援助はありません。
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まとめ
日本の医者に較べて、ニュージーランドの研修医や専門医の収入はどうでしょうか。
自分の日本での経験を考えると、ニュージーランドの方が恵まれているかなと思います。
研修を終わった医師の給料を見てみると、日本では開業医の収入は、病院の勤務医の収入をかなり上回ります。(厚生労働省の第21回医療経済実態調査の報告(平成29年実施)による)
反対に、ニュージーランドでは病院のconsultantの方がかなり金銭的には優遇されていると言えます。
ニュージーランドのGPは経済的には、働いた時間に見合った収入を得られていないというのが、私を含めた多くのGPの正直な気持ちです。
特に、有給、学会参加や年金への補助などがありませんからね。
もちろん仕事も収入もない人がいるこの世の中で、あまりGPが文句をいうと、GP以外の人にはあまりいい顔をされないのですが。
しかし、私達GPの知識と経験に対して、やはり病院の医師と同じような待遇が保障されるべきだと思います。
GPの労働条件が悪ければ、若い医者達はGPになるのを避けたり、他の国へ脱出したりしてしまいますから。
政府がもう少し真剣にプライマリーケアに目を向けてくれることを、期待しています。