でも色々な理由で、より健康的な生活習慣(禁煙する、お酒を減らす、食事量を減らす、ジャンクフードを食べない、運動をするなど)に変えられないでいる人が違います。
こういう人達には、GPも診察のたびに話をしたりしているのですが、最終的には習慣を変えるのは当事者です。
体重が増え続け、糖尿病になってしまったり、うつ病になったりとか。
慢性の病気になれば、その分医療費がかかり、膨大な税金がその人達の健康管理に使われることになりますし、医師も多くの時間をこの人たちの健康問題のために費やすことになります。
『政府は慢性疾患を予防、または管理を良くして、余分な医療費を抑えたい!』
でも
『多くの人は色々な理由で、自分の健康管理のために行動を変えようとしない』
この問題を解決するのに、何か良い方法はあるでしょうか。
ニュージーランドでしていることの一つは.....
『お金で釣る』です。
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妊婦の禁煙
妊婦の禁煙を推し進めるために、禁煙した妊婦はお店(The Warehouseという全国チェーン店)の商品券をもらえるというシステムです。
まず、
- 禁煙のための最初のセッションに出たら$50の商品券。
- 4週間禁煙に成功したら$80の商品券。
- 12週間禁煙したら$100の商品券。
- 出産時まで禁煙していたら$50の商品券。
ニコチンパッチなどは無料で提供され、出産前にはpepi-podという、赤ちゃんと添い寝をするときに安全なように使うプラスチックのトレイのようなものを無料でもらえます。
この商品券のシステムが始まってから、禁煙をするために紹介される人の数が3倍になったそう。
2017/18のデータでは、半分以上の妊娠女性が4週間後も禁煙を続けていたとのこと。
その後12週で41%、出産時にまだ禁煙していたのは28%(実際の数では59人)。
こういうのはシステムを悪用する人はいないんでしょうかね。
例えば、ほとんどタバコを吸っていなかったのに、商品券欲しさに、禁煙のために紹介してもらい、そのまま禁煙を続けて、商品券を全部もらうとか。
また、出産時に禁煙していた人の、1年後、2年後、5年後はどうなっているのでしょうか。
タバコそのものの販売を禁止してしまえばいいのに、と思うのは私だけでしょうか。
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C型肝炎の治療
その他には、医療費を無料にして、必要な人はお金の心配なく医者に受診できる様にする。これは商品券ほど効果はないと思いますが、ニュージーランドではよく見ます。
例えば、C型肝炎の治療。
最近は治療薬の開発が進んだ結果、C型肝炎の治療(Glecaprevir / pibrentasvir (maviret)を使用)がシンプルになり、治癒率が格段に上がりました。
C型肝炎も、ほおっておくと肝硬変、肝がんのリスクが上がります。また、他の人に感染を広めるというリスクもあります。
ただ C型肝炎は、注射する違法ドラッグのユーザーの割合が多いので、感染しているかどうかの血液検査そのものを受けに行くのにすら、抵抗があることが多いとのこと。
ニューヨークで『ニードルエクスチェンジ』という無料でドラッグユーザーが使用後の針と清潔な針を交換できる活動がありますが、そこでC型肝炎の検査や治療をする人に$25の商品券を提供したところ、検査や治療の割合が増えたということ。
ニュージーランドでは、この場合は商品券は使っていないのですが、
- Maviretを受け取るのにAbbVie Care Pharmacyを使ったら、通常の薬局での費用を払わな行く良い
- コミュニティーサービスカードを持っていたら、GPでC型肝炎治療のための診察代を払わなくて良い
- C型肝炎治療のためなら、治療に関わる交通費、食費(?)、医療費をWINZの特別の助成金で賄うことができる
というようになっています。
(このためGPは $115/患者 まで、fundingを政府関係の機関に請求できることになっています。
ただ、ニュージーランドのシステムでは患者さんがGPクリニックに来れば来るほど、クリニックの収入は減るので、今までセカンダリーケア(病院)でやっていた治療を、プライマリーケア(GPクリニック)でやることによって、仕事量的にも経済的にもGPクリニックの負担が増える一方です。)
この無料のシステムを提供したことで、どのくらいC型肝炎の感染者が検査と治療に向かわせることができる様になったかのデータは、調べた限り見つかりませんでした。
慢性疾患の定期的診察
以前は『care plus』と呼ばれていたもので、現在私の働く地域では『Kia Ora Vision(KOV)』と呼ばれています。
2つ以上の慢性疾患のある患者さんは、通常クライテリアを満たします。
この『KOV』は慢性疾患を持つ患者さんの管理をよくするために、定期的な診察を患者さんには無料にする、というものです。
基本的には、慢性疾患の管理に限られるので、血圧がまだ不安定で、定期的に薬の量や種類を変える必要があるとか、うつ病で状態が落ち着くまで定期的に診る、とかいう場合に使われます。
病状によりますが、最初は看護婦さんとGPを3ヶ月毎に受診し、最終的には看護婦さんだけ年に一回受診。
管理が落ち着けば、このシステムから出て、普通に診察料を支払って受診することになります。
個人的感想は、このシステムはクリニックに来ない人を来てもらう様にするには、あまり効果的でないように思います。
受診しない人は、無料でも受診しません。
糖尿病や血圧の管理の悪い人で、『Kia Ora Vision』で無料だからGPクリニックにくる、という人はそんなにいない気がします。
ただ、慢性疾患で、病態のコントロールにモニターがいる年金暮らしの高齢者などには役立っていると思います。
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最後に
金銭的に得をする、ということを出しに、健康のプロモーションをする、というのは日本では見たことがなかったので、特に妊婦さんに商品券を出して禁煙を勧める、というのをニュージーランドで知った時には驚きました。
喫煙、アルコールを含め、慢性に続く疾患は、最終的には多大な医療費を費やさざる病態に繋がるので、$100、$200のお金で、将来を変えられるならば、十分効果があるというのは理解できるのですが。
私は『自分の健康の問題なんだから、自分でもっと責任を持って行動してほしいな』と思うのですが、皆さんはどう思いますか。
日本でも、こんなことしているのでしょうか。