世界に名の知れた新聞、ニューヨークタイムズやガーディアンなどに事件が取り上げられていました。
こちらニュージーランドの新聞にも取り上げられていました。(記事の中には、東京医大は”top medical school” とか “presctigeous shcool”とか書いてあります。日本人の感覚とはかなり違うと思うのですが、こうやって書くとよりセンセーショナルに聞こえるからでしょうね。)
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東京医大の意図
東京医大の意図は、将来、勤労時間が少なく大学や社会に貢献度が少ない女性医師を減らしたいという事のようです。
同じお金をかけて教育するなら、出産だ、子育てだと言って診療時間を削ることの多い女性医師でなく、馬車馬の様に働かせられる男性医師を育てたいのですよね。
気持ちはわかります。
私自身も、国立の機関で研修を受け、普通なら地方の同様の機関や、大学病院などでバリバリ働くことが期待されていたのでしょう。
でも、自分の家族を作ることを選んで、ここニュージーランドに来て(=日本の医療に貢献せず)、そして日本のトレーニングと全く違う専門の科を選んでいる。
多分この私の将来が、私の医学部入試の試験官にわかっていたら、試験官に「こんなのは入学させたくないなあ」と思われたかもしれません(笑)。 (ちなみに私は、いわゆる旧帝大の一つの医学部に行き、東京医大ではありませんでした。)
最初にこの記事を読んだ時は、「表沙汰にならなかっただけで、多分、今までも似たようなことがあったのかもしれないなあ。(実際2006年から、この操作が行われていたとのことです)この入試の点数操作をしたのはこの医大の経営に関与している管理職なのだろうけれど、彼らが、自分達の利益だけを考え、その権限を悪用して入学試験の合格、不合格という、人の一生を左右する決定に影響させるべきではない。」という、一般論的な感想を持っただけでした。
今まででも、特に私立の大学では裏口入学とか聞くことがあったので、自分自身はあまり驚きませんでした。(それが、また怖いですね。こんな不正なことが、当然のように思われてしまうなんて。でも、あまり驚かなかったのは、私だけではなかったようですが。)
そんな時、もう少し考えさせられるようなことが起こりました。
そこに行く前に、少し私の日常生活を説明しておきます。
私の家族は夫と娘1人、猫1匹、牛3頭。
うちの夫は他の都市で働いており、通常は週末だけ、こちらの家に帰ってくるというパターン。そのため週日は私と娘だけで暮らしています。
つまり私は、働くシングルマザーのように、仕事、子育て、家事などほぼすべての日常のことを1人でなんとかしているわけです。
仕事は毎日していますが、午後の患者数を減らして、娘が選んだ音楽やダンスのレッスンに連れていけるように調節しています。
自分自身も娘も比較的健康で、他に介護をしないといけない両親がいるとかいうわけでもなく、普通に考えられる以上のストレスがあるわけではありません。
ティーンエイジャーになったばかりで、親に何度も言われないとやることをしない娘と口論したり、まだ仕事のペーパーワークが終わってなくても娘をピックアップしに行くために職場を出たり、気になる患者さんがいて電話を一本入れておきたくても、その時間が作れなかったり、夜、家に帰ってきて、疲れてご飯を作りたくなくても作ったりとか、誰でも経験するような小さな日常のストレスを経験していました。
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娘の不在で私が思ったこと
そのような日常の中、先週、私の娘が一週間の学校からの旅行に出かけました。
自分の仕事は休みにしなかったので、ホリデーではないのですが、何故か最近ホリデーを取った時よりもかなり幸せで、自由になった気分でした。
職場の同僚にも「何か、今日は元気ありますね」なんて言われたりもしました。多分、無意識にニコニコしていたのでしょう。
だって、朝は自分の起きたい時間に起きて、人のお弁当を作る必要はなく、自分の行きたい時間に職場に行けるのです。(もちろん予定された、始業時間前にいかないといけないのですが、朝型の私はクリニックが空いていれば、早く行って、ぺーパーワークとか、資料の片付けとか、まとめとかを診療の前にしたいのです)。
患者さんの診療が終わっても、娘をピックアップしたり、どこかに連れて行く心配もなく、自分のペースでペーパーワークをし、電話で状態を確認したい患者さんに電話し、時間が余れば自分の患者さんのレコードのaudit(ある調べたい状況について、自分の患者さんの中からランダムに決まった人数の患者さんを抽出し、自分の診療のクオリティーを監査する)したり、やりたいことが何でもできるのです。
家に何時に帰ってご飯を作らないといけない、ということもないので、やることが一段落したら、帰りたい時間に家に帰り、ガーデニングやらピアノの練習やら、自分のやりたい事をして、お腹が空いたら自分で簡単なものを作って食べる(一週間日本のインスタントラーメンを食べました。笑)そんな事が可能なのです。
そこでふと思ったのですが、日本の男性の多くは、結婚して子供がいても、この一週間の私と同じような気持ちでいるのではないでしょうか。
私の場合は、自分の事は自分で面倒をみないといけませんでした。でも患者さん以外の誰の面倒を見る必要がありませんでした。日本の男性の場合は、自分の面倒さえ見なくていいという可能性もあります。
もしも誰の面倒を見る必要がなく、誰かが自分の面倒を見てくれるなら
- 当直や夜勤などしようと思えば、自分でその間の子守りの手配などしなくても、可能である。
- 仕事が終わってから、同僚とご飯食べに行ったりお酒を飲みに行ったりしても、家にいる子供がご飯を食べられずに困るということはない。
- 仕事がたまっているのに、職場を抜け出して、子供をいろいろな活動に連れて行ったりとかする必要がない。
- 子供が病気になっても、「僕は休めないよ」といえば誰かが何とかしてくれる。
- 疲れて家に帰って、お腹が空いていたら、何もしなくても料理が出てくる。
- 食べた後、食器を放っておいても、次の日には綺麗になって食器棚に入っている。
- 汚れた服は脱衣所に置いておけば、いつの間にか綺麗になって引き出しに入っている。
何故これらが可能かというと、妻がこれらを全てやってくれているからです。(もちろん、祖父母などが手伝ってくれたりという家庭もあるでしょうから、極論ですが。)
その妻が医者だったら、どうやってその医者が、子供が生まれる前と同じように働けるのでしょうか。
子供がいると、24/7(=毎日24時間という意味)で、この子供の面倒を見る人がいるのです。今まで、夫と妻と2人でやっていた事を同じように続けようと思ったら、もう1人の大人が必要なだけの仕事が増えているのです。
この仕事量をどのように分担すれば良いのでしょうか。
日本の女医の感想
今回のスキャンダルに、「言語道断だ」とか「信じられない」と言った感想がたくさん述べられていました。
でも反対に、「女子学生が差別されてもしょうがない」という医者もかなりいたようで、その中には女医さんも少なくなかったようです。
皆さん、今の日本のシステムの中で、改革は不可能だとすでに諦めているのでしょうか。
(女医にはできない力仕事もあるから、女医ばかりになったら困るとか、世の中に皮膚科と眼科が増えて困ると書いていた女医さん達がいましたが、そんな状況になる可能性がどこにあるのか、私にはわかりません。)
男性だけでなく、女性も含め、日本人の意識とシステムは頑なに変化を拒んでいるようです。
少し感情的になって、筆に力が入りすぎたかもしれません(笑)
ちょっと冷静になって、この日本の状況をニュージーランドの状況と較べてみましょう。
ニュージーランドと日本の比較
現在ニュージーランドには現時点(2018年)で医学部は2つしかないのですが、その1つのオークランド大学からのレポートを見てみました。
2016年の時点で Faculty of Medicine and Health Science (表の中ではFMHS) は、女性が68%でした。
ニュージーランドでは高校を出て医学部を目指す人は1年目はHealth Scienceを取り、その中で成績がある程度以上の人だけ、Faculty of Medicine (医学部)に入れます。そのため、医学部だけでの割合は68%ではないかもしれませんが、多分それとあまりかけ離れた値ではないと思います。。
このMSOD steering groupのレポートを見ても、50%以上は女性であることは確かなようです。
では医師の男女比はどうでしょう。
ニュージーランドは外国の免許を持つ医師が、ニュージーランドの医学部を経由しないで医師免許を取る割合がかなり高いので、実際のニュージーランドの医師の男女比と、ニュージーランドの医学部学生の男女比は異なります。
New Zealand medical councilが2018 年に出したレポートによると、2016年の時点でニュージーランド医師の43.9%が女性でした。
これを日本の統計と比較してみましょう。
厚生労働省のレポートでは、日本の女性医師の割合は平成26年(2014年)の時点で20.4%.
このHuffpostの記事によると、日本の女子医学生の割合は男子の33%(=⅓)から150% (=1.5倍)とその医学部によって、かなり差があるようです。
従って、医学生の男女比は比較がしづらいですが、女性医師の割合はニュージーランドの方がかなり高いです。
前出のこの厚生省のレポートによると、すでに女性医師のキャリアを支援する活動は行われており、お金もある程度注ぎ込まれているようです。
実際日本で働く女性医師に、最近の5年ほどでどのような変化が見られたか、仕事がしやすくなったか、質問してみたいです。もしもこの記事を読んだ女医の方でご意見があったら、ぜひお聞かせください。
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まとめ
日本で、システムの改革と同時に人々の考え方をどのように変えていくか。
前出のこの厚生省のレポートによると、すでに女性医師のキャリアを支援する政府の活動は行われており、お金もある程度注ぎ込まれているようです。
実際日本で働く女性医師に、最近の5年ほどでどのような変化が見られたか、仕事がしやすくなったか、質問してみたいです。
もしもこの記事を読んだ女医の方でご意見があったら、ぜひお聞かせください。