(*2019年1月21日のアップデートです。Northland DHB がワンガレイでdrop in clinicをしています。2019年1月21日と22日限りです。詳しくはこのNorthland DHBのページを参照にしてください。
この記事の内容で、予防接種の接種場所や日時についてはみなさんがお読みになる時点では既に終了したり、変更したりしたものがある可能性があります。ご了承ください。)
私の働くクリニックはNorthlandにあるので、このために患者さんからの問い合わせが相次ぎ、忙しさが増したようです。
細菌性髄膜炎に関する政府のレポートはこのMinistery of Healthのウェブサイトにあるので、興味のある方は読んでください。(この記事はこのレポートからの情報、ESRのレポートと、GPとして私が持っている情報を載せてあります。)
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Meningococcal diseaseとは
まずMeninngococcal diseaseについて説明し、その後今回の政府の無料ワクチンへの動きになった理由、その他の注意事項を述べます。
Meningococcal diseaseというのはNeisseria meningitidis と言う細菌に寄る感染症です。人間の口腔や鼻腔内にいます。この細菌がいるからといって、すべての人が病気を起こす訳ではありません。
この細菌がなんらかの方法で血流に入ると、菌血症や髄膜炎を起こして、短期間の間に非常に重篤な状態になる可能性が高いです。
ただ病気の始まりは、よくあるウイルス感染である感冒のように、熱が出て喉が痛い、お腹が痛いとか、なんとなく調子が悪いとかいう症状で始まることが多く、一般の方はもちろん、我々医者にとっても非常に悩ましい病気です。
(すべての風邪の患者さんに抗生物質を筋肉注射や静脈注射することは、利益より害のほうが多いです。また、meningococcal diseaseであれば、数時間の内に急激に状態が悪化するので、多くのウイルスや細菌の感染症のように「明日またクリニックに来てくださいね。またチェックしますから」と計画を立てても、あまり役に立たないのです。)
ニュージーランドでのmeningococcal diseaseの特徴
このNeisseria meningitidisには12以上もグループがあるのですが、病気を起こす代表的なグループはA、 B、 C、 Y と W の5つです。世界的にはグループAに寄る感染が最もよく見られるのですが、ニュージーランドではBが最も多いです。
2006年頃に既にニュージーランドにいらっしゃった方は、記憶にあるかもしれませんが、meningococcal Bのケースが増加したために、2004年ー2006年に政府が無料のワクチンMeNZB™接種を実施しました。(対象は20歳までの子供・若者で、その後幼児への定期接種は2008年まで、その他のhigh riskの人への接種は2011年まで行われていました。)
2001年には300症例/年以上あったmeningococcal Bのケースが2010年には30症例/年になりました。(もちろん、この予防接種のプログラムが行われなかったらどうなっていたかということはわからないので、どれだけの症例の減少がこのプログラムのおかげであったかは明確にはわかりません。)
ただこのMeNZB™ワクチンの効果は長くは続かないので、その時に予防接種を受けた人は、現在ではMeningococcla Bに対する十分な免疫力はない可能性が高いです。
同様に2011年にNorthlandでグループCの症例が相次ぎ、政府がMeningitecというグループCをカバーする予防接種を20才以下の若者に対して行い、症例数を減少させたこともあります。
(ESRのレポートから引用)
上のグラフを見ると、グループBが未だに一番多いことがわかります(一番上のジグザクの線です)が、2番目のグループWが徐々に増えてきているのが見て取れます。
その他の特徴は、若い人のmeningococcal disease症例が多いということです。
年齢別にみると今年のデータでは、年齢の低い子供に症例が多く、ティーンエイジャーに近づくにつれて症例は減り、ティーンエイジャーになると、また症例が非常に多くなると言うパターンがあります。
(ESRのレポートから引用。症例の絶対数でなく、人口100,00あたりの割合になっています。)
小さい子供は症例の数が多く、またティーネイジャーはこの細菌を鼻腔、咽頭に持っているいわゆるキャリアが多いことが知れれています。
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NorthlandにグループWのワクチンが集団接種されることになった理由
地域別に各グループの症例数を示したのが下の表です(ESRのレポートから引用)
人口100,000人当たりの症例数は、私の住むNorthlandで断とつに高く、そのケースがほとんどグループWによるものであることもわかります。
また、以下の表に見られるようにグループWによる症例の死亡率が、他のグループのMeningococcal diseaseになった場合よりもかなり高いというのも、今回グループWを対象に予防接種を行うことになった理由のようです。
(ESRのレポートから引用)
以上にあげたデータから、政府が予防接種をNorthland在住の生後9ヶ月から4歳児(5歳の誕生日の前日まで)と13歳から19歳(20歳の誕生日の前日まで)カバーすることに決めたようです。
9ヶ月未満の赤ちゃんは、予防接種が免疫力にもたらす効果が十分でないので、この無料予防接種には含まれていません。
私の個人的憶測ですが、多分政府が十分な数のワクチンを用意することができて、お金が無限にあれば、20代後半までの若い人と小学生もすべてカバーしたのではないかなと思います。
ただ集団免疫により、現在政府が無料でカバーする人達がすべて予防接種を受ければ、予防接種を受けていない人達も、その恩恵を間接的に受けることが予想されます。
今回Northlandで行われる集団予防接種ワクチン Menactra
今回政府が行うことにした無料の予防接種はMeningococcal グループWをカバーすることを主目的にしています。
このMenactraワクチンは、グループWだけでなく、グループA、C、Y、Wの4つのグループをカバーします。
受けた時の年齢にもよりますが、約5年は免疫力が持つようです。
以下のimmunization advisory centreの情報によると、9ヶ月以上2才以下の子供には2回の接種が勧められています。
(現在のところ、政府がこの年齢の子供に2回目の接種を無料でカバーするというニュースは聞いていません。もちろん私費でこの2回目のワクチンを受けることは可能です。)
- 9–23ヶ月の健康な子供 -3ヶ月間隔で2回接種。3 年後にまだリスクが高い場合、さらに1回接種を勧める。
- 2歳以上7歳未満の健康な子供 -1回接種。3 年後にまだリスクが高い場合、さらに1回接種を勧める。
- 7歳以上の健康な子供と大人 - 1回接種。5年後にまだリスクが高い場合、さらに1回接種を勧める。
- 2歳以上7歳未満の子供で、健康上の問題によりmeningococcal diseaseになるリスクが高い人 - 8週間間隔で2回接種。3 年後にまだリスクが高い場合、さらに1回接種を勧める。
- 7歳以上の子供と大人で、健康上の問題によりmeningococcal diseaseになるリスクが高い人 -8週間間隔で2回接種。5年後にまだリスクが高い場合、さらに1回接種を勧める。
記事の最初の方に書いたように、ニュージーランドで一番多いのはグループBのmeningoccal diseaseです。
今回の政府による集団予防接種はグループBはカバーしませんので、このワクチンを受けても、もちろんmeningococcal diseaseになる可能性はあります。
今回の政府の無料予防接種プログラムに含まれないけれど、接種を希望する場合、または別のワクチンを希望する場合
Northland在住でないけれど、ワクチンを受けたい方
Northland在住であるけれど、年齢的にこの政府のプログラムでカバーされない方
Meningococcal グループBのワクチンを受けたい方
以上の方は私費になりますが(Manactraは私のクリニックで$140弱)ワクチンを受けることができますので、かかりつけのGPにお尋ねください。
もしも、正常の免疫力が失われる病気を持っていらっしゃったら、年齢にかかわらず無料でワクチンを受けられる可能性があるので、わからない方はGPクリニックにお尋ねください。
無料の予防接種を受けに行くNorthlandの方へ
Northlandに住んでいらっしゃる方で、9ヶ月から4歳、13歳から19歳のお子さんがいらっしゃる方、またはご自分がこの年齢に当てはまる方は、2018年12月5日から12月21日までに行われる無料の予防接種にぜひ行ってください。
こちらのNorthland DHBのウェブサイトに、どの場所でどの時間に予防接種が受けられるかのスケジュールが書いてあります。(普通のGPクリニックでは今回のmeningococcal diseaseに対する集団の無料予防接種は行っていません)
Northlandに住んでいらっしゃらない方は、Northlandを訪れても、この無料予防接種を受けられません。
予防接種に行くときには、
1. Wellchild book (もし手元にあれば)
2. NHIナンバー (処方箋などに、あなたの名前と一緒に書いてあるナンバーです。もしも分からなければなくてもいいですが、分かれば時間の節約になります。)
を用意してください。
最近他のワクチンを受けた人は、その情報もGPクリニックで書面にしてもらい、持っていくと役に立ちます。
接種後は20分待つように言われるので、時間の余裕を持って行ってください。
DHBは充分な数のワクチンを用意しようとしているようですが、もちろん必ず充分に用意できる確証はないので、(ちょっと空いてからにしよう)と12月21日まで待たずに、早めに行くことをお勧めします。
繰り返しますが、この無料の予防接種は、現在(2018年12月1日)のところ普通のGPクリニックで行う予定はありません。
無料の接種が受けられない年齢の方は、GPのクリニックで接種が受けられますので(もちろんクリニックが、ワクチンを販売元から購入できる限りですが)かかりつけのGPクリニックにお問い合わせください。
2018年12月現在、私のクリニックでは11月末に注文したmenactraはまだクリニックに届けられていないとの事です。
まとめ
1. 2018年12月5日から21日まで、9ヶ月から4歳、13歳から19歳のNorthland在住者にmeningococcal diseaseのワクチンが無料集団接種されます。
2. このプログラムにカバーされない人や、MeningococcalグループBのワクチンは私費で接種が可能なので、GPクリニックにお問い合わせください。
また免疫が抑えられる疾患を持っている方は無料で受けられる可能性があるので、この場合もGPクリニックにお問い合わせください。
3. 今回使われるMenactraワクチンはグループA、C、Y、Wの4つのグループをカバーしますが、ニュージーランド全体では一番多いグループBはカバーしません。
また効果には個人差があるので、今回の無料ワクチンを受けた方も、meningococcal diseaseになる可能性はあります。
調子が悪くなって心配な方はGPを受診してください。