NZREX 概要とサンプル問題(パート1)

今回はNZREXの試験そのものの概要の説明と、New Zealand Medical Council (NZMC)のウェブサイトに載っているNZREXのサンプル問題を一緒に見てみましょう。

もう一つの記事にサンプル問題の残りがカバーされています。

私が試験を受けた10年以上前とNZREXは少し変わっているようなのと、もう15年以上前に私はNZREXを受けたのであまり記憶が確かではない、と言う理由で、私の経験はあまり参考にならないと思います。

そのためこの記事はNZMCのウェブサイトを参照にしています。

本気でNZREXを受ける方は、必ずNZMCのサイトを読んでくださいね。

NZREXを受ける前に読んでおくべき本のリストも載っています。一般的な医学的知識と技術、英語能力が必要十分であれば、このリストの本を読んでいなくても合格すると思いますが、リストの中にあるBPACはニュージーランドの状況に即したものであるので、時間があれば目を通しておいたらいいかなと思います。



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NZREXの形式と評価される点

基本的にはObjective Strutured Clinical Examination(OSCE)でUSMLE step2 (CS)と同様のものです。

ただNZREXのテストは、全てが患者を診るものでなく、血液検査結果と症例のシナリオを与えられて、次のステップを選ぶといった感じのものも入っています。

私はUSMLE Step 2 CSを受けたことがないのですが、私がいろいろとウェブサイトでみたところでは、受験者の感想としては、NZREXの方が容易であるようです。

NZREXで最も重視されるのが、

  • history taking
  • clinical examination

特にこれらに関しては、個々の症例に対応した的を絞ったhistory taking とexaminationができるか

  • investigating
  • management
  • clinical reasoning

他には、試験官に求められれば、診断名やさらに行う検査などにつき自分の考えを説明できること、コミュニケーションが医師として適正であることなどが求められます。

これがNZREXの実際のステーションがどのように設置されているのか示したものです。(NZMCのウェブサイトから引用。)

全部で16のステーションがあり、その中の3つのStaticと書いてあるステーションは患者を問診・診察する必要がないものです。

一つのステーションに割り当てられた時間は12分で、そのうち2分は入室前にインストラクションを読むための時間となります。

 

NZMCのウェブサイトに載っている"NZREX candidate booklet"の5−10ページに、どのような症状の症例がNZREXでテストされ、どのようなチェックポイントがあるかが書かれています。

実際の自分のNZREXの試験の前に、このリストに出ている症状のケースに対して全て自信を持って問診、診察、鑑別診断、必要な検査のオーダーができるようにしておきましょう。



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NZREX サンプル問題

次にこのNZMCのウェブサイトにNZREXの問題のサンプルがあるので、一緒にみていきましょう。

できればサンプルをプリントアウトして、それを見ながら以下の文章を読んでいただけるとありがたいです。(サンプルに書いてあることを、全てここに書き直すことはしませんので。)

Sample 1

最初の症例は22歳のJaneさん。腕に切り傷を負って、救急外来にきました。傷の手当てをした看護婦さんが、この怪我が自傷であることを疑って、医者のあなたに精神的に大丈夫かどうかをみて欲しいということです。

このケースに関する指示は

  • Take a focused history
  • Assess the patient’s mental state
  • Advise her on appropriate management.

できればサンプルの中に書いてある患者役の人への指示を見ずに、まずどのように質問をするのか考えてみてください。10分しか時間がないので、あまり多くの質問はできませんが、うまくこれが自傷であることを聞き出すことが鍵だと思います。

もしかすると、ただ「どのように怪我をしたのか、詳しく教えてもらえますか」と質問するだけで、自傷であることを明らかにするのかもしれません。シナリオを見ると、Janeさんは現在抗鬱剤を飲んでいるようなので、普段の健康状態や飲んでいる薬について質問すると、そこでうつ病のことや薬のことを言ってくれるのかもしれません。

もしもそんなに簡単に患者役が自傷であったことを明かさなければ、私だったら”看護婦さんが、Janeさんが自分で自分を傷つけたのではないかと 心配しているようです。私もそれが心配なのですが、よかったら話してもらえますか”と言ってempatheticに迫ってみます。

もしもそれでも、自傷であることを明かさなかったら「疑ってごめんなさいね。でも若い人がいろいろ精神的なストレスのために自傷することは、時々診ることがあるので、もしもJaneさんが何か悩んでいたり、私が助けになれることがあれば、言ってくださいね」という感じですね。でさらにempatheticに迫る。

まあ、ここまで言って患者役が明かさないということはないと思います。(患者役は試験を受ける人が正しいアプローチをしたら、それに応じて情報を与えるように指示されているので。)

自傷であることやうつ病であることがわかったら、あとはHEEEADSS (Home, Education and Employment, Eating and exercise, Activities and peers, Drugs, Sexuality, Suicide and depression, Safety, Sprituality)に沿って、open questionsをします。ただ時間がないので、かなり急いで質問を進めないといけないのですが。

これはサンプルの採点表にあるPoints of focus は

  • Current and past history of self-harm
  • History of depression and treatment  
  • Current and past history of suicidality  
  • Social and psychological supports  
  • Check for substance abuse

時間があったらbipolarやschizophreniaの鑑別診断をする質問をしてもいいですが、あまり余裕はないかもしれません。

あとはmedical knowledgeについても採点されるので、例えばSSRIだったら最初の1週間ほどは不安がひどくなることもある、などと患者さんに説明すると(Janeさんは最近抗鬱剤を再開したばかりなので)余分に点をもらえるかもしれません。(これも時間がないかもしれませんが)

HEEEADSSの質問を一通りして、Empathetic に話を聞き、最後にサポートの有無の確認、Safety nettingをすれば、このケースで非常に低い点をもらうことはないでしょう。

Safety nettingを忘れないようにしてください。

この場合は友達に連れてきてもらったので、例えばその友達に退院後はJaneさんと一緒にいてもらうか、定期的にJaneさんをチェックしてもらうため、一緒に話をしてもいいかJaneさんに許可を得たり、その地域のCrisis teamの連絡先を教えたりです。

また次に患者さんが何をするのかのプランを明確にすること(普通は、明日またかかりつけのGPを受診して、傷をチェックしてもらいつつ、今日の件について話をする、抗鬱薬は続けることを指示する)。

最後に患者さんに、自分自身が安全だと感じるかどうか確認する。(もしも安全だと感じなければ、つまりまた自傷するかもしれないという不安があれば、医師のあなたがその場でCrisis teamに連絡することが必要です。)

よくありそうなケースなので(実際NZREXは、何回も同じケースが問題に出されるらしい。)練習しておきましょう。

Sample2

症例2は左肩の痛みで整形外科外来に来た55歳のColinさん。(実際にニュージーランドで、肩の痛みがある人が整形外科の外来を初診でかかることはありません。まずはGPに行くので。)

このーケースの指示は

  • Take a focused history
  • Undertake a physical examination of his left shoulder

まずは問診で痛みの期間、どんな痛みでいつ痛みが起こるか、何か思い当たる原因があるか。既往歴の有無などを訊きます。少し質問したところで、それなりに鑑別診断を頭に入れて、質問し、狭心症など命に関わる疾患の可能性などは(絶対違いそうだな)と思っても、質問しておかないと、減点になるかもしれません。

本当に肩の痛みか(首の症状、胸痛の有無など)をある程度明らかにした後、診察にかかります。

NZREX受験の準備の段階で、診察は、肩だけでなく、例えば膝、首、股関節などそれぞれの部位について3分ぐらいで診察をできるように練習し、その時に例えば、肩なら「このテストはimpingementを調べている」とか試験官に言えるようにしておきましょう。そんなに細くそれぞれの筋肉などについて知らなくても通ると思いますが、知っておいても損はありません。

このケースのPoints of focusは

  • Clear history of trauma
  • Current symptoms  
  • Excludes cardiac pain  
  • Examines active ROM  
  • Examines rotator cuff muscles  
  • Diagnoses rotator cuff tendonitis/tear

でした。

Sample 3はOSCEでないので、パート2でカバーします。

 

Sample4

65歳のHarryさん。足が痛くてGPから外来に紹介されてきました。

このケースの指示は

  • Take a focused history from the patient and undertake a focused examination.  
  • During your physical examination, please tell the examiner what you are doing.  The examiner will give you information on clinical findings if your examination is relevant to the presenting problem.
  • With 1 minute to go the examiner will ask you for your preferred diagnosis.
  • Do not discuss treatment options. No marks available for either of these.

”整形外科外来”と書いてないので、内科か血管外科の症例かもしれません。

他にはヒントがないので、患者役の人がもらうシナリオを見てみましょう。

シナリオを見てみると、典型的な間欠性跛行の症状が主訴のようです。

問診の要点は、現病歴以外に、高血圧、虚血性心疾患などPeripheral vascular diseaseと関係の深い病気の既往歴を聞き出し、喫煙の有無をチェックする。一応radiculopathyを除外するために、背中の痛みや、夜寝ている時に痛みがあるかなど質問するといいでしょう。

主な診察の要点は脚の動脈圧とcapillary refillをチェックすること。

採点表にあるPoints of focusは

  • History of claudication  
  • Past relevant medical history of hypertension  
  • Social history including tobacco  
  • Examination of leg pulses and capillary return  
  • Diagnosis of peripheral vascular disease

とありました。

このケースはあまり悩むことなくいきそうです。

Sample 5もOSCEでないので、別の記事でカバーします。



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Sample 6

足首を怪我して救急外来に来たJohnさんです。

あなたのTaskは

  • Take a focused history relevant to the presenting complaint
  • Undertake a focused examination relevant to the presenting complaint.
  • Describe the x-rays presented to you
  • To describe to John what your management plan will be

    です。

多分骨折をしているのだろうと予想されます。

足首の骨折ときたらThe Ottawa ankle rules。記憶があやふやな人はこのウェブサイトでチェックしてください。(診察のビデオもあります。)

問診では足首をどちらの方向にひねったか(Inversionかeversion)を訊き、受傷後すぐに歩けたかどうか訊くのを忘れずに(The Ottawa ankle rulesの一部です)。後は歩く時にunstableかどうかなどを訊いておくといいでしょう。

診察はOttawa rulesに従った触診、足の血菅や神経損傷がないかチェックし、レントゲンをチェック。

レントゲンは腓骨遠位端の剥離骨折avulsion fractureです。

このシナリオでは、患者さんが何週間でスポーツに戻れるか訊くようです。

骨が治るのはだいたい6週間。私ならBack slab (castを半分にして、患者さんが夜や休憩している時は取り外せるようにしたもの)か Moon bootsをあと5週間は歩行時に使い、その後徐々に普通の活動からスポーツに戻っていくと答えると思います。

ただサンプルについている評価の表には

Points of focusは

  • Mechanism of injury  
  • Past Hx injuries  
  • Applies Ottawa ankle rules  
  • Diagnoses avulsion fracture  
  • Advises mobilisation and physiotherapy  
  • Return to soccer after minimum of 3 weeks

となっているので、back slab までつけるのはやりすぎなのかもしれません。受傷後5日は歩いたり、少し走ったりしていたようですからね。

ただBack slabを使いながらphysiotherapyを始めると言っておけば、慎重になった分で点数が大幅に引かれることはないのではないかと思います。

もしも骨折の症例などで、試験中にどう治療すればいいのか全くわからなかった場合は、「ギブスか手術が必要になると思うけれど、上級医に相談してきます」とか言った方が、全くのでたらめをいうよりはいいのではないかと思います。(これは私の推測です。)

全くのでたらめが、たまたま当たっていたらもちろんラッキーですけれど。

Sample 7

最後のサンプル症例です。

30歳のHollieさん、バーテンダーです。最近6週間ぐらい、瓶のふたを開ける時に肘に痛みがあるとのことです。

あなたのtask は

  • Undertake a focused history of her elbow pain and undertake an appropriate focused physical examination.
  • You will be asked to provide a probable diagnosis.  
  • Please tell the examiner what you are doing and what your findings are.
  • With 1 minute to go you will be asked for the most likely diagnosis and your treatment recommendation.

シナリオを読んだだけで、テニス肘 (lateral epicondylitis)の症例であろうことが予想されるので、それを証明するべく問診と診察を行います。lateral epicondyleを押さえると痛みがあり、手首のextentionで痛みが再現されることなどを、言葉で説明しながら診察します。

鑑別診断としてはradial tunnel syndrome、 cervical radiculopathy、他の外傷について質問するぐらいでしょうか。

治療は肘にbraceを使う、抗炎症剤、physiotherapyをまず試し、それが効果なければステロイド注射と言うところでしょうね。

採点表のPoints of focusは

  • Pain history  
  • Clear history of repetitive actions  
  • Point tenderness over lateral epicondyle  
  • Specific tests for lateral epicondylitis  
  • No investigations  
  • Physio and NSAID



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まとめ

これらのサンプルを見ると、よく知られている疾患が多く、本などを参考にして自分の問診、診察のパターンを決めて、何回も練習すれば、実際の試験で大幅にポイントを減点されることはないと思います。

一つのStationの時間が短いので、10分間で問診と診察をスムーズに終えられるような練習が必要です。(私も毎日の診療で、患者さん一人10分で問診と診察が終えられればいいのですが...)

あとは一つ一つのStationで、最初に礼儀正しく挨拶し、終わった後には患者さんにお礼を言うのを忘れずに。

次のンZレXサンプル問題 パート2の記事では、今回カバーしなかった、患者さんを診察しないStationのサンプルを見ていきましょう。

  • B!