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NZでの医師資格取得情報

NZREX サンプル問題 (パート2)

今回は、前回の記事でとばした、OSCE以外のStationの問題を見ていきましょう。

Sample 3 とSample 5 です。

New Zealand Medical council のウェブサイトのサンプル症例集をお手元に用意してください。

実際に私がどのように考えたかを書いています。

もしもあなたの答えが私のものと違っていても、考えが筋道立っていれば、正解かもしれません。(最後を読むとわかるのですが、実は私は幾つか間違えましたので。)



Sample 3

以下がinstructionです。

You are in hospital outpatient clinic reviewing blood test results.

  • There are eight parts to this paper based station.  
  • You are expected to complete all eight parts in the allotted time for the station. (*持ち時間は10分です)
  • Use the following list of actions to select the most appropriate option for each part.
  • The options will be the same for each part. Answers may occur more than once.
  • Please use the mark sheet to record your answer

Part 1

68歳の男性で、1ヶ月続く疲れと腹痛が主訴。

検査の結果は、小球性鉄欠乏性貧血を示しています。(ニュージーランドの血液検査を見る時に、いろいろな単位が日本とは違うので、少し事前に慣れておいたほうがいいでしょう。異常な値は太字になっているので、全く知らなくても、見当はつくと思いますが)

年齢と症状からいって、まず消化管の悪性腫瘍疑いですから、それに対応した答えを選びます。

あまり悩む必要もなく、2のgastroscopyとcolonoscopyをorderすると言う選択になると思います。

Part 2     

52歳の女性、2年続く疲労感

血液検査では、全血算は正常ですが、Ferritinとtransferrin saturationが非常に高いです。

Haemochromatosisのようですので、7のhaemochromatosisのgene testが答えです。

(多分、疲労感ということで甲状腺機能、糖尿病のテストなども最初にしているとは思いますが。haemochromatosis のためにhypothyroidになったり、糖尿病になったりするので、実際はgene testをオーダーする際にその辺りのテストも、もしもまだチェックしていなければするべきでしょう。あとは最初に鉄のオーバーロードが影響する肝機能もです。Ferritinが 500 mcg/Lなので、venesection 瀉血が必要になりそうです。)

Part 3   

48歳の女性。リウマチ関節炎の既往があり、長い間疲労感を感じている症例

血液検査ではHb 120 g/Lとやや貧血気味。正球性貧血です。ESRが正常範囲内なので、Ferritinの150も、実際はiron storageは低いけれど、炎症で上がっているわけではなさそうです。

私なら3番の”GPに患者を返して、3ヶ月後に再検査をする”を選ぶと思います。

Part 4

最近 carbamazepineを癲癇の治療のために内服始めた18歳。全身倦怠感で調子が悪いために血液検査をしました。

結果は赤血球、白血球、血小板ともに減少しており、汎血球減少症を示しています。carbamazepineの副作用でしょう。

かなり血球数は低いので8の”Admit under haematology”ですね。

Part 5   

25歳の菜食主義者の女性。疲れが主訴です。(疲労感の期間は記載なし)

血液検査は大球性貧血なので、5のvitamin B12とFolateを調べる、です。

Part 6   

70歳の男性、3ヶ月続く疲労感、息切れ。脾臓の腫大と鎖骨上リンパ節の主題を認める症例。

正球性貧血を認め、血小板減少とlymphocytosisが著明です。B-cell chronic lymphocytic leukemiaでしょうか。

また”血液内科に入院”させることになりますね。(答えは8)

Part 7

22歳の女性、咽頭痛の後に疲労感が3週間続いている。

血液検査は軽度のlymphocytosisを示しています。シナリオを読んだだけでも伝染性単核球症だろうと察しがつきます。

答えは4番の”EB virusのTitreを調べる”です。

Part 8

最後の症例は 22歳の男性。大腿骨を骨折し1ヶ月前に open reduction and internal fixation(日本語では観血的整復固定術というのかな)を行っています。

検査結果は軽度の小球性貧血で、ferritinの値も低いです。

年齢と、最近の骨折の既往、他に調子が悪いとかいう記載もないことから、単純に骨折時の失血による鉄欠乏性貧血と言うことでいいのでしょう。

選択肢としては

  1. Give iron replacement and repeat tests in 3 months か
  2. Discharge to care of general practitioner and repeat tests in 3 monthsだと思います。

別に鉄剤を投与しなくても時間が経てば貧血は治ると思いますが、Ferritinがかなり低いので、選択肢としては”鉄剤投与”の方が妥当でしょうかね。

整形外科外来で血液検査をしたのだろうなと予想し、”Discharge to care of GP”は当てはまらないように思うので(単に貧血の問題だけについて述べているのであったら、これでもいいと思いますが)1番が答えでしょう。

 

答え合わせをしてみましょう。

全問正解だったようです。

これを見ると、ひねった問題は出されないようです。(少なくともこのサンプルでは。)

教科書通りの、定番の症例をただ素直に回答していけば、全問正解できます。(患者さんとのやり取りのStationで苦労する可能性も考えて、このようなmultiple choice quiestionsはできるだけ点を取っておきたいです。)

次はsample 5です。

Sample 5

Instruction は

  • There are five parts to this paper based station.
  • You are expected to complete all five parts in the allotted time for the station.
  • Use the following list of actions to select the most appropriate option for each part.
  • The options will be the same for each part. Answers may occur more than once

です。

Part 1

82歳の男性。ここ1週間、混乱した状態でだんだん悪くなっている。熱はなく、脈拍正常。3週間前にminor head traumaがあったことが、カルテに記載されている。

よく老人に混乱状態を起こすのは尿路感染などの感染ですが、多分”熱がない”という記載で”感染でない”ことを示唆していると思います。

多分みなさん、すぐに診断名を思いついたと思いますが、硬膜外血腫の可能性が高いので、a)の病院に入院させるが答えです。

Part 2    

養老施設にいる72歳の女性。2日間調子が悪く、低度の発熱も見られる。既往歴としては痴呆症と2型糖尿病。膀胱炎を疑って、Trimethoprim(トリメトプリム)が昨日開始された。血圧は少し高いですが、脈拍は正常範囲内。微熱あり。血糖値は良さそうです。

実際の臨床の場面では、昨日抗生物質が開始されてからも、更に状態が悪くなっているかどうか知りたいところですが、それは書いてありません。自分の患者なら尿の検体を細菌と抗菌剤の感受性の検査に出し(昨日、抗生物質投与前に検査に出されていれば、必要ありませんが)以前の尿検査の結果と、昨日から今日までの状態の変化を総合的に考慮して、抗生物質を変えるか、このまま少し様子を見るか決めるでしょう。

ただこの問題の選択肢で可能があるのは

  1. c) review in 2 days と
  2. e) commence treatment with antibiotics

の二つ。

e)は”commence" with “antibiotics”とあるので、薬を変えると言う選択してには当てはまらないようです。結局答えはc)でしょうね。

Part 3  

家族と住んでいる74歳、男性。ここ2週間ほど時々disruptiveで、特に夜間にこの症状が多い。往診してみると、患者さんは攻撃的で診察に協力してくれない。少し脈は早いが、血圧は正常。軽度の熱がある。

熱があるので、何かの感染を示唆しているのでしょう。他の情報は全くないので、ちょっと悩ましいです。ただ、感染だったら、いますぐ何かをしないといけないですね。この限られた情報からは、感染症で、性格・行動の変化が見られるということからヘルペスなどの脳炎の可能性を疑うべきなのでしょうか。

でも尿路感染とか、よくある細菌感染をチェックすることが、まず必要だと思うのですが。

問題文中には微熱以外に、細菌感染であるということを示唆する情報はないので、a)の”入院”しか選べないかな。

Part 4  

2週間前に大腿骨頸部骨折の手術をした68歳の女性。手術後すぐから混乱しているということで、娘さんが心配している。血圧と脈拍は少しだけ高め。熱はない。呼吸数は22回/分。胸部は肺雑音なしで手術の傷は治っている。他には診察上問題はなかったということ。

呼吸数が多いけれど、肺雑音はない。他には問題がなかったということは”息切れや胸痛”はなく、”酸素飽和度も正常だった”ということなのだろうか、”深部静脈血栓を示す所見はなかったのか””皮膚に点状出血はなかったか””尿は正常だったのか”といろいろ疑問になります。

ただ最近の大腿骨頸部骨折の既往と言う情報から、素直に脂肪塞栓が脳に行ったか肺動脈の血栓で酸素飽和度が低くて混乱しているとかの可能性だけ考えればいいのか。(ただ、大腿骨頸部骨折であれば、いくら入院期間が短いニュージーランドでも、しばらくはリハビリなどで入院しているでしょうか、その間には異常が発見されなかったのだろうか、とまた疑問になります。)

でも多分考えすぎは間違いの元で、a)の”入院”が答えでしょうね。(なんか”入院”を選択することが多すぎて、ちょっと不安になりますね。)

結局、私の答えは間違いでしたので、この記事の最後の部分を参照してください。



Part 5   

73歳の一人暮らしの男性で、だんだん物忘れがひどくなってきた。調理用のコンロ(というかヒーターというか、日本語ではなんと呼ぶのでしょうか)をつけたまま、忘れたことが何度もなる。

軽度の脳梗塞を何度かした既往あり。また高血圧の既往もあるが、それ以外は大きな問題は今までなかった。診察では古い左側の片麻痺があり、血圧はかなり高めの172/90。他の診察所見は正常。

話からは、血管性痴呆のようです。一人暮らしをすることには安全の問題があるのでそれをどうにかしないといけませんが、血圧の管理もよくないので医者にも診てもらわないといけない。

”GPを受診する”という選択肢があれば、迷わずそれにするところですが(そこから必要に応じてソーシャルワーカーや老人医療の専門医に紹介するので)残念ながらその選択肢はありません。

ソーシャルワーカーは必要だと思いますが、血圧の管理も大切なことを考えると、医師に診てもらわないといけないので b)の老人専門医に紹介する、でしょうか。あんまりニュージーランドの現実のpathwayには即していない設問です。

私の答えは間違いでしたので、この記事の最後の部分を参照してください。

 

答え合わせをしてみましょう。

ガーン。Part 4 とPart 5は間違いでした。

 

Part 4の手術後の混乱の症例の正解は”老人医療の専門家の外来に紹介”でした。呼吸数22回/分は心配することないということですね。書いていなかった”胸痛”や”息切れ”はなかったということなのでしょう。つまり救急のケースではなかったようです。

実際はこれだけのことで老人医療専門家には紹介はしないで、まずGPでいろいろ検査などするので、正解の”老人医療専門家には紹介する”理由がわかる人がいたら、教えてください。

Part 5の血管性痴呆症の症例の正解は”ソーシャルワーカーに紹介”でした。まあこれは、患者さんのセイフティを考えると、早めにソーシャルワーカーの助けが必要なので、納得できなくはありません。このシナリオはこの患者さんがすでにGPにかかっていて、その時GPが(血圧の管理や認知機能の検査以外に)何をすればいいかという意味なのでしょう。

 

New Zealand Medical Councilにウェブサイトに載っているサンプルは以上です。

基本的には、典型的な症例ばかりだと思います。ニュージーランドの医療システムを知りすぎている私は考えすぎましたが、素直にいけば十分な点は取れるでしょう。