女性のみなさん、子宮頸がん検診はしていますか。
若い人達は、パピローマウイルス(human papilloma virus HPV)の予防接種は受けましたか。
私は、HPVの予防接種の効果がある年齢ではないのでしていませんが、子宮頸がん検診は定期的に行っています。
今年、娘が12歳だったのでHPVの予防接種も行いました。
子宮頸がん検診は、皆さんがあまり気乗りしないのはわかります。
私の患者さんでも、嬉しそうに検診しに来る人は見たことがないです(笑)。
私も、子宮頸がん検診は、一番好きな検診ではないことは認めます。
でも子宮頸がんは予防することが比較的容易ながんであるので、皆さんにいろいろ知っていただいて、将来のこのがんの発症や死亡率を減らしていけたらと思います。
頻度
ニュジーランドでは、一年に160人ほどの人が子宮頸がんにかかり、50人/年ほどの女性が、このがんのために死亡しています。
がん発生のメカニズム
子宮頸部がんの最大の危険因子は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。
つまりこのウイルスに感染しなければ、子宮頸がんが起こす可能性は非常に低いということです。
このウイルス感染は性行為を通じて起こります。
一度も性行為をしたことがない人はこのウイルスに感染するリスクがないので、子宮頸部がんになる頻度は限りなく低いということです。(子宮がんと子宮頸がんは異なるので、注意してください。)
HPVはいろいろなタイプがあります。
タイプによって、
- 性病である尖圭コンジローマを起こしやすいもの
- ウイルス性疣贅(いわゆるイボ)を皮膚に起こすものも
- 悪性のがんを起こすリスクが高いもの
があります。
一般の方はそこまで知る必要はありませんが、がんを引き起こすリスクが高いタイプはHPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV45などの15タイプほどです。
(HPV1からあるので、大変多くのHPVのタイプがあるかわかりますよね。実際100以上のタイプのHPVがあるらしいです。)
子宮頸部がんの症例の70%はHPV16 とHPV18によるものです。
ただ、リスクの高いHPVに感染しても、すべての人ががんを発症するわけではありません。
特に若い時期はは何人もの人と接触する可能性が高いので、感染を受ける可能性も上がるのですが、大半のHPV感染は、自分の免疫力で自然に排除されると言われています。
がんを発症するのは、このウイルス感染が持続した場合です。通常は感染からがんの発症まで10年から20年はかかります。
子宮頸がんを減らすためには、
1. 定期的にチェックすること(子宮頸がん検診)、と
2. HPVの予防接種
が重要です。
子宮頸がん検診
前出のニュージーランドのMinistery of Healthのウェブサイトによると、子宮頸がん検診より、子宮頸がんの発症を90人に1人から570人に1人、死亡を200人に1人から1280人に1人に減らせるそうです。
検診スケジュール
ニュージーランド政府が行っている検診は、25歳から69歳の女性を対象にして、3年ごとに行われます。
(*2019年11月に、子宮頸がん検診の開始年齢が20歳から25歳に繰り上げられました。20歳から25歳の間の年齢の方で、20歳で子宮頸がん検診を始められた方は、昔のルールに従って次の検査の呼び出しがかかるようになっています。)
初めて検診を受けた人や、5年以上検診のギャップがある人は、次回の検診を1年後に行うことが、また検診で提出したサンプルに子宮頚部の細胞が取れていなかった場合は、通常3ヶ月後にもう一度検診を行うことが勧められます。
検査結果が異常であった場合は、別項を参照してください。
将来、子宮頸部がん検診のスケジュールは変わる可能性があります。(多分検診頻度が少なくなり、開始年齢が上がる。)
次の検診がいつかわからない方は、かかりつけのGPクリニックに問い合わせてください。
ニュージーランド政府は、この子宮頸癌の検診を変えることを計画しています。
まだ最終決定ではないのですが、新制度では25-69歳を対象に、まずHPVの感染の有無をテスト。
その結果により、どんな頻度でどんな検査をするかが決まります。
こちらのリンクを参考にしてください。
検診場所
1. かかりつけのGPクリニック
私はこれを一番勧めます。
なぜなら、結果がGPのところへ送られてくるので、婦人科への紹介が必要か、次の検診はいつになるのかなど、かかりつけのGPが明確に把握できるからです。。
検診のため受診を予約する時に、子宮頸がん検診であることを告げてもらえるとありがたいですね。
検診だけであれば、たいていの場合は医師でなく、看護婦さんに診てもらって、検診を受けることになります。
なんらかの理由で医師に子宮頸がん検診をしてもらいたい場合、例えば
- 他に隠部に皮膚病変があって診てもらいたいとか
- 宮脱かもしれないから同時にチェックしてもらいたいとか
は、GPを予約し、すべてを一回の診察でやって貰えば良いでしょう。
ただそういう場合は、その他の問題(例えば、めまいが多くなって困っているとか、息切れについて相談したいとか)については、別の診療予約を取って改めてGPに話をしに行きましょうね。
GPの通常の1患者あたりの診療時間は15分なので、問診をとって子宮頸がん検診をして、内診をしたら15分近くは少なくともかかってしまいますから。
もしもお住いの街にFamily Planningがあったら、こちらでも子宮頸がん検診をしています。予約をして、行ってください。
もしもFamily planningへ行った場合は、かかりつへのGPへ結果のコピーを送るように頼んでもらえると、ありがたいです。
これもその街によりますが、もしもお近くにSexual Health Clinicがあったら、そこでもできるようです。予約を取る時に、子宮頸がん検診に対応しているか確認してくださいね。
4. その他のコミュニティの機関
その地域によっては、マオリのhealth providerなどの機関が検診を行っていることもあります。
検診の費用
日本人を含むアジア人やマオリ、パシフィックアイランダーは政府の補助があり、子宮頸がん検診は無料です。(2018年現在)*ただ政府のウェブサイトには、2019年現在これについてはコメントがありません。私のクリニックではまだ無料ですが。
なぜなら、こういった人種の検診の受診率がかなり低いので、政府が検診率を上げようと努力しているからです。(ニュージーランド全体の子宮頸がん検診率は70−75%ですが、アジア人やマオリ、パシフィックアイランダーは50−60%です。)
私は、こういうところがニュージーランドはえらいなと思います。マオリの人はさておき、アジア人はもちろん完全に移民です。それにも関わらず、すべての人が平等な医療を受けられるように、努力する。(もちろん不平等な事もたくさんありますけれどね)
日本だったら、合法的に日本に来て働いている東南アジアの人の検診率が低いから、なんとかしましょうなんて、ありえなさそうですでしょう。(もしもしていたら、すみません。教えて訂正していただけるとありがたいです。)
その他にも5年以上検診のギャップがある人は、子宮頸部がん検診は無料です。
また22歳以下なら、Family Planning での検診も無料です。(ただ2019年11月から子宮頸がん検診の開始年齢が25歳になったので、2019年11月以前に検診を始めた22歳以下の人のみ対象になります。)
検診の結果
検診の結果は2週間ぐらいで、検診を行ったクリニックに送られてきます。もしも結果が異常であれば、クリニックから今後の計画について連絡があると思います。もしも連絡がなかったら、そのクリニックにご自分から連絡して確認することをお勧めします。
異常がない場合
3年ごとの検診を続けてください。
初めての検診の後や5年以上のギャップがあって検診を行った場合は、通常クリニックから1年後に次回の検診を行うように、患者さんに連絡が行きます。
異常だった場合
もしも検査結果が異常だからといって、必ずしも心配する必要はありません。すべての変化ががんにつながるわけではないのです。
一応、GPや看護婦さんが結果を説明する時に出てくるかもしれない、異常の検査結果を簡単に説明しておきます。
もちろんすべてを網羅しきれないのと、それがこの記事も目的ではないので、興味がある方は政府のガイドラインを参照にしてください。
ASC-US Atypical squamous cells of undetermined significance
細胞は正常でないけれど、前癌状態なのかどうか確定できない
CIN Cervical intra-epithelial neoplasia (CIN)
異常な細胞が頸部表層に見られる。これらはがんになる可能性がある病変です。CIN は1から3まであり、CIN1が最も程度の少ない変化。CIN3はcarcinoma in situと呼ばれ、日本語ではよく上皮内がんと訳されています。(正確に訳すのが難しいのですが、細胞それぞれの変化ががん細胞と言える変化をしているけれど、がんのように増殖していない状態です。)
ASC-H Atypical squamous cells - cannot exclude HSIL
細胞が正常でなく、CIN2かCIN3の可能性がある。HはHSIL High-grade squamous intra-epithelial lesion (equivalent to CIN2/3)を意味します)
検診結果と、患者さんの年齢、以前の検診の結果などによって、次に行うことがガイドラインで決められています。ほとんどのケースは、病院の婦人科医への紹介されます。これも簡単に説明しておきます。
婦人科への紹介
婦人科では、大概、子宮頸がん検診で異常であった患者さん達が紹介されてくる、コルポスコピー外来というのがあります。
GPクリニックでの検診時のように、子宮頸部をチェックするのですが、コルポスコピーと言う特別な顕微鏡のようなものを使って観察します。子宮頸部を染めたり、生検を取ったりして、異常の程度や広がりを確認ます。
次にもう一つの大切な予防手段である、予防接種を見てみましょう。
予防接種
ニュージーランドでは2008年にパピローマウイルスに対する予防接種 Gradasilが、Year 8(12歳)の女子を対象に始まりました。
Gardasil は2017年に、9つのタイプのHPVをカバーするGardasil 9に取って代わられました。これと同時に男子に対しても接種が開始されました。
無料接種が受けられる年齢も広がって、2018年現在、9歳から27歳の誕生日の前日までの男女が無料でGardasil 9の接種を受ける事ができます。27歳以上の人も、自費で受ける事が可能です。
Gardasil 9はHPV 6、11、16、1,8、31、33、45、52、58と以前のGadasilより多くのタイプをカバーするだけでなく、9−14歳の間に予防接種を受ければ、2回の接種で終わります。(ただ15歳以上で接種を開始する場合は3回必要ですし、他のケースで3回接種が必要な場合もあるので、詳しくはGPのクリニックで相談してください。)
性交渉を開始する以前の年齢で予防接種するのが最も望ましいのですが、そうでなくても接種の時点で感染していないタイプのHPVを防ぐ効果があるので、GPと相談の上、接種を考慮してください。
HPVは、子宮頸がんだけでなく、肛門がん、膣がんや咽頭がんの原因にもなるので、予防接種により、これらのがんも減らせる可能性があります。
HPVは性行為によって他の人に移るので、男子への予防接種がルーチンになったことにより、その男の人の生殖器や肛門癌、尖圭コンジローマが減るとともに、その人のパートナーの子宮頸がんを防ぐことができるかもしれません。
同じ頃に予防接種を始めたオーストラリアのデータでは接種時に年齢が若かった人にはすでに異常な検診結果が減ったという統計があり、ニュージーランドでは尖圭コンジローマの頻度が大幅に減ったという報告が出ています。(尖圭コンジローマを起こすのは主にHPV6と11なので、予防接種でカバーされています。)
日本との比較
子宮頸がん検診
日本で子宮頸がん検診を受ける場合、20歳以上で2年に1回の検診が推奨されています。
国立がん研究センター、がん情報サービスのレポートによると2016年の検診率は約42%でした。
ニュージーランドよりかなり低いようです。
HPVの予防接種
日本では2013年に HPVのワクチンが定期予防接種に入れられましたが、副作用の報告が多いということで、数年で政府は『積極的に接種を勧めない』という状況になってしまったようです。
本人や親の希望があれば、まだ無料で接種は受けられるようですが、日本で使われるのは2価か4価 (2タイプか4タイプのHPVをカバーする)で、Gardasil9の様に9価のものが希望であれば、自費で接種を行っているクリニックで行わなければなりません。
まとめ
子宮頸がんは、防ぐ事が比較的容易ながんです。
女性の皆さん、GPから子宮頸がん検診の知らせがあったら、ぜひ行ってきてください。日本人は無料です。
また若い人たちには、HPVの予防接種をしてウイルスの感染を防ぎ、あなたばかりでなく、あなたのパートナーも感染から守って欲しいです。
みんなが努力すれば、子宮頸癌は減ります。