赤ちゃんが欲しいのに、なかなかできない。そんな悩みは国を問わず同じです。
私も高齢で結婚したので、妊娠していないことが分かるたびに、毎月泣きたくなるような気持ちになる。そんな不妊に悩む方達の気持ちはよくわかります。
日本語の通じないニュージーランドに来て、不妊治療ができるのだろうか、どのくらい待ち時間があるのだろうか、どのくらいお金がかかるのだろうか、余計に心配になっている方も多いと思います。
今回はそんな方達のために、ニュージーランドでの不妊治療の現状を説明します。
最初にすること
公費で行くことを考えている方は、まずはかかりつけのGPに行きましょう。
もしも最初から私費で行く予定で、できるだけ早く専門医と話をしたいということであれば、後述する不妊治療のクリニックに予約を取ってください。GPからの紹介状は要りません。
GPにかかった場合、通常は、女性の年齢などにもよりますが、何も医学的な問題がなさそうであれば、少なくとも1年は妊娠する努力を続けるように勧められます。
それでも不安で、何か医学的問題が無いかチェックしておきたいと言うことであれば、GPが女性のホルモンテスト、男性の精液のテストなどをリクエストします。
GPが、以前の妊娠、出産歴、男性が以前のパートナーとの間に子供を持ったことがあったかどうか、喫煙、体重チェック、女性の風疹やB型肝炎の抗体検査などいろいろなことをチェックします。
その検査を見てアドバイスをくれると思うので、悩んでいるけれど、公費で行くのか私費なのかも決めかねている、と言う方は、是非GPを受診してください。
GPがする検査
女性 - FSH、エストロゲン、プロジェステロンなどのホルモン検査、子宮頸癌検診(もし定期的になされていれば、必要ありません)、風疹の抗体テスト、その他の一般antenatal血液検査
男性 - 精液のテスト
男性、女性とも - HIV、B型とC型肝炎のテスト
となります。
もしもチェックで医学的な問題が見つかった場合、または何も異常はなかったけれどある期間以上努力しても妊娠しなかったとします。
それらの場合は、GPから不妊治療の専門家へ紹介状が送られます。
公費と私費の選択
治療は公費で受ける場合(無料)と私費になる場合があります。
公費の治療を受けられるのは、以下に示した条件を満たし、さらにいろいろな状況がポイント化されて、十分のポイントがある人だけとなります。
もちろん私費であれば、どなたでも受診して不妊治療の専門家と相談することができます。
私費で相談を受けに行った場合は、最初の受診料は私費で払うわけですが、公費の治療を申し込む資格があるかどうかを初診時にチェックしてくれるので、もしも資格があればその時点で公費に乗り換えてもいいし、公費の治療を申し込みつつ、待ち時間の間に私費で治療を始めることも可能です。
公費での治療
公費での不妊治療を申し込める条件
公費で治療を受けるには、その他一般の医療が公立病院で受けられるようなビザ(永住者ビザか2年以上のワークビザ)を持っているか、ニュージーランド国民である必要があります。
その他にも、公費で治療を受けるためにはいろいろな条件があります。
最近(2018年11月)オークランド、ノースランド地域ではこの条件がアップデートされたようです。
この先も条件がアップデートされる可能性があるので、最終的にはGPと話をして、公費の治療に申し込めるかどうかを確認してくださいね。
公費(=患者さんには無料)で不妊治療が受けられる条件を書いておきます。
(以下の条件を満たしているからといって、必ずしも治療が受けられるわけではありません。ただこれらの条件を満たしていなかったら、公費での治療に申し込むことはできません。)
お住いの地域によって、少しだけ条件が異なりますが、最終的にはポイント制で、例えば太っている人が、BMIが除外条件に入っていない地域で申し込んでも、結局はBMIが高いとポイントが低くなるので、実際に治療を受けられる可能性は低くなります。
1. ニュージーランド国民か、永住権ビザ、2年以上のワークビザを所有していること
2. 年齢が以下の条件を満たしていること
女性は紹介状が送られる時点で40歳未満であること。
オークランドとノースランドでは紹介状が送られる時点で男性が55歳未満であること。
他の地域には男性の年齢のリミットはないようです。
3. BMI
最初のスペシャリストの診察時に女性のBMIが35未満であること。最初の治療の時点でBMIが32以下であること。
サウスアイランドでも女性のBMIが32以下であること、と言う条件があります。
ハミルトン/ミッドランドとウェリントンのエリアではBMIの条件はないようです。(ただ上述したように、申し込みはできても、BMIが高ければポイントが低くなり、結局治療が受けられない可能性高くなります。)
ノースランド/オークランドエリアでは男性のBMIは最初のスペシャリストの診察時と最初の治療時に40未満であること。
4. 不妊期間
1年努力しても妊娠しなかった場合。または何か医学的な原因があって、妊娠が非常に困難なことがわかっている場合。
ウエリントンエリアでは、女性の年齢が35歳以下の場合は、18ヶ月以上妊娠する努力をしていることが必要です。36歳以上であれば、他の地域と同じように12ヶ月です。
もちろんウェリントンエリアでも、最初から医学的な問題があることがわかっている場合は、12ヶ月も待たず、早めにGPに受診して相談してください。
5. 喫煙
男性、女性ともに治療が行われる3ヶ月前以上から喫煙していないこと。
通常は紹介状を送る時点で喫煙していたら、公費の治療への紹介状は送りません。
6. 家族構成
ノースランド/オークランドエリアとサウスアイランドでは、12歳以下の子供2人以上が自分と一緒に住んでいる場合は、公費の治療には申し込めません。
例えば、自分の連れ子、またはパートナーの連れ子、もしくは両方の連れ子が一緒に住んでいて、2人以上が12歳以下であったら、公費の治療が受けられないということです。
どちらの子供でもない養子の場合も、この同居の子供に数えられるかもしれないと言うことですが、個々のケースによって異なる可能性があります。直接、記事の後半に書いてあるプライベートのクリニックに問い合わせて見るか、まずGPに行って公立病院に紹介状を送ってもらい、そこで話し合ってください。
上記以外の地域ではこの除外条件は無いようです。
公費の治療が受けられるの決定条件
公費の治療に申し込んだ場合は、年齢、不妊歴、医学的問題の有無などいろいろなことがポイント化されます。
Clinical Priority Assessment Criteri (CPAC)と言うスコアリングシステムを使って、そのポイントが加算され、総合の点数によって公費で治療を受けられるかどうかが決められます。
2018年現在、100点満点中65点あれば、公費の治療が受けらることになっています。
一番最初のアセスメントで65点なくても、その先、時間が経って不妊が続けばポイントが上がりますので、将来のある時点で65点を満たすことが可能です。
その辺りはどのくらい待ったら治療が受けられそうかなど、専門家と話をする際に訊いてみてください。(多分、ご自分から訊かなくても、65点に満たなかった時点で説明してくれると思いますが。)
ニュージーランドでは同性同士のカップル、または独身の女性でも不妊治療は受けられます。
もちろん公費の治療を受けるには上記の条件を満たしつつ、CPACが65点以上ないといけません。
私費であれば、その様なハードルはありません。
日本では同性のカップルや独身女性が不妊治療を受けるのは非常に困難と聞いたので、それに比べるとニュージーランドはいろいろなオプションが開かれているなと思います。
公費の治療の待ち時間
だいたいの目安は、GPの紹介から最初の不妊専門家の診察までが3−4ヶ月です。
公費で治療が可能であることが判明してからは、治療によって、子宮内精子注入などは待ち時間なく始められますが、IVFは約12ヶ月待ちです。
地域によっても異なる様です。
公費の治療に含まれるもの
治療法の選択
治療方法の選択は、患者さんと専門家が話し合って決めるのですが、最終的にはそれぞれのケースの状況によって専門家に任されます。
例えば、卵管が狭くなっていることがわかっていて、それ以外には問題がなさそうであれば、女性が最初からIVFを望んでいても、卵管を正常に広げるマイクロサージャリーをすることになるかもしれません。
また女性がご自分の卵子でIVFを希望しても、年齢や他の条件で卵子の状態が悪いということであれば、ドナー卵子でのIVFを勧められるかもしれません。
公費であるので、医者も治療を受ける人の希望を聞きながらも、成功率が高い治療を選択する必要があります。
(多分この辺りは、私費であれば少し違うのではないかと思います。)
公費でカバーされる治療と回数
公費では、2回の治療がカバーされます。
1回の治療は
- 1サイクルのIVFタイプの治療(ドナー卵子を使ったり可能性も含まれる)
- 4サイクルの子宮内精子注入(ドナー精子を使ったり、排卵誘発することも含まれる)
- 1回のマイクロサージャリー(卵管か精巣)
のいずれかになります。
もしも一回目の治療で妊娠しなかった場合は、また同じ治療か異なった治療方法で2回目の治療が受けられます。
ただし2回目の治療前の時点でCPACが65点以上を満たしていないといけません。
もしも公費の治療を待っている間に妊娠したら
もしも公費の治療を待っている間に、私費の不妊治療を始めていて妊娠した場合や、自然に妊娠した場合は、もちろん公費の治療を始める必要は無くなります。
次回の妊娠をするのに困難があった場合に、また不妊専門医のアセスメントとスコアリングから始めることになります。
例えば私費の不妊治療で妊娠したけれど、非常に早期に流産してしまった場合などはそのタイミングなどで個別の対応になると思われるので、直接尋ねてみましょう。
公費でもかかる費用
公費の場合、薬代も含め治療費はすべて無料ですが、代理母などを使い、法的な手続きが必要な場合は、その法的手続きの費用は自分持ちになります。
また冷凍した受精卵を保存しておきたい場合は、ある期間を超えると保存にかかる費用も有料になります。
私費の場合
私費の場合は、ご自分で直接専門医に行って検査や治療を始める事ができます。GPに紹介状を書いてもらう必要はありません。
ほとんど待ち時間はないと思われます。
勿論、最初にGPに行って基本的な検査をして、明らかな問題がないかチェックしてもらってもそこから紹介してもらっても構いません。
私費で受診できるクリニック
クリニックによっては私費と公費と両方の治療を行っているところもあります。
こちらのMinistry of Healthのウェブサイトに地域ごとの不妊治療のクリニックの情報が載っています。https://www.health.govt.nz/your-health/certified-providers/fertility
これによると現在ニュージーランドで私費の不妊治療ができるクリニックは4つです。
この中には公費と私費と両方の治療を行っているところもあります。
支店のクリニックがNZ全域にあります。
オークランドに一つクリニックがあります。(ウェブサイトは現在ダウンしているようです。)
3. Repromed
オークランドを含めた北島に幾つかクリニックがあります。
クライストチャーチにクリニックがあります。
不妊治療にかかる費用
これは一概には言えません。
実際に自分が最終的に妊娠するまでに、どれだけの治療を必要するかは最初から予測はつかないところでしょう。
この2015年の記事によると、IVFによる治療の大まかな費用は$26,000から$32,000とのこと。
もちろんIVFまで行かずに、排卵誘発や子宮内精子注入だけで妊娠した場合は、費用はこんなにかからないでしょうし、Intracytoplasmic sperm injection (ICSI) - 最初の写真の様に受精を技師の手で行うIVFであれば、さらに費用がかかると思います。
もちろん何サイクル行うか、どれだけ薬を使うかによっても費用は変わります。
先にあげたクリニックのウェブサイトに、費用についてはそれぞれのアイテムについて詳しく書いてあります。
参考までにfertility plusの費用の表のリンクを載せておきます。(2019月4月現在Fertility plus のサイト自体がダウンしているようで、費用のリンクもつながっていません。)
クリニックによって少し異なると思うので、実際にはご自分の地域のクリニックのウェブサイトを参照してください。
不妊の精神的ケア
不妊治療は、受けている人にとっては終わりの見えない辛いものです。肉体的だけでなく、精神的にもかなりストレスがかかるものです。
受精卵ができて大喜びし、妊娠が成立しなかったから落ち込みというローラーコースターの様な気分のアップダウンも経験することでしょう。
毎日の生活の中で、そのストレスをどの様に処理していくかは非常に大切です。
私が妊娠を待ちわびていた時期は、ニュージーランドで医師の仕事を始めた頃だったので、毎日毎日、妊娠することばかり考えて日々を送るということはせずにすみました。
もしもお仕事をしていらっしゃらなくて、時間を持て余していらっしゃる方は、趣味やオンラインビジネスなど、何か夢中になれるものをぜひ作って、子供以外にも自分の生活を楽しめる様にしましょう。(これはお子さんが生まれた後にも非常に大切なことです。)
ニュージーランドのチャリティー団体であるFertility NZはで、不妊で悩む人達を支える活動をしています。
ウェブサイトには各地域のサポートグループの情報などありますので、Fertility NZのウェブサイトも参考にしてみてください。
最後に
日本語が通じない国での不妊治療には、余計にいろいろと不安が募るものだと思います。
今回の情報が、ニュージーランドで不妊治療を受けたい方のお役に少しでも立つことを願っています。
他に質問等ありましたら、お気軽に”お問い合わせフォーム”を使って連絡してください。