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ニュージーランドの国民投票2020年の結果-『安楽死』と『大麻』

2020年10月に、ニュージーランドでは『安楽死』と『大麻』に関する国民投票がありました。

結論から言うと、『安楽死』に関するものは約2/3の票を確保して通り、『大麻』に関するものはかなり僅差であったのですが、過半数票を得なかったため、通りませんでした。

詳細はこのニュージーランド政府のウェブサイトを参考にしています。



『安楽死』に関する国民投票の結果

この国民投票は約65%の投票が『賛成』、約 34%が『反対』(全部で100%にならないのは無効票がある為)と言うことで、かなりの大差で法案が通ることになりました。

(グラフは上記のニュージーランドのウェブサイトより引用)

 

『安楽死』に関する国民投票の内容については、私のこの記事を参照してください。


上の記事に書いたように、この『安楽死』に関する法案は ”Binding” と呼ばれ、『賛成票が過半数であれば、近い将来、実際の法律が施行される』ことになる国民投票でした。

つまりこれから2021年にかけて詳細が決められ、実際に『安楽死』が可能になる訳です。

 

上の記事を読んだいただいた方はご存知だと思いますが、私の懸念はいくつかあります。

1. どの医者に『安楽死』に関与できる余裕があるか

ホスピスが公式に『安楽死に関与しない』と言う態度を表明している為、安楽死を望む患者さんがアプローチするのは現在のところ、GPか病院の医者になります。

 

GPの中には、もちろん『安楽死』に賛成する人も反対の人もいます。

賛成するGPは、忙しい仕事の合間に時間を作って『安楽死』を望む患者さんの手伝いをするのでしょう。

公立病院の医者が現在のシステムの中で、どのように『安楽死』に関われるかは不明です。

 

GPにせよ、公立病院の医者にせよ、通常の医療を行うのも非常に長い待ち時間(GPの診察を受けるのが2週間待ちとかガンの手術まで数ヶ月待ちとか)があるような現況で、『安楽死』のためのシステムがどのようになるのか、非常に興味深いです。

こんな現状を考えると、多分『安楽死』を専門にするプライベートの医者が出てくるのではないかと思われます。

2. 『安楽死』に関する費用はどのように捻出されるか

『安楽死』は関わる医者にとって、かなり時間とエネルギーを取られる医療行為(と呼べるのか?)となります。

その時間とエネルギーと責任について、それなりの費用がかかります。

 

そのお金は誰が負担するのか。

政府か、患者さんか。

政府であれば、正直言って、『人の命を救う医療にかけるだけのお金もないのに、どこからお金を捻出するのか』と私は思います。

 

患者さんであれば、その費用を払える人と払えない人が出てきます。

ただでさえ、医療が不平等であること、つまりマオリなど人種によって、受けられる医療に差があることが問題になっているのに、それを助長することになります。

 

このような問題をどうやって政府が解決するのか、興味深いです。

(可能性としては、解決することなく、とにかく始めるのではないかと心配しています。またニュージーランドの医療に関する問題が増えそうな予感です。)



『大麻の合法化とコントロール』に関する国民投票

この結果はかなり僅差でした。

ニュージーランド国内の選挙が終わった直後には、あまりに僅差であったため「海外に住むニュージーランド人の投票を加えて集計されるまで、わからないぞ」と言われていたのですが、結局僅差のままで終わりました。国内の選挙直後の発表では賛成46%、反対 53%だったのが、最終的には賛成48%、反対50%となりました。

(このグラフも上記のニュージーランド政府のウェブサイトより引用)

国民投票された法案の内容については、こちらの記事を参照してください。


『大麻の合法化』に反対であった私は、かなりほっとしました。

 

このニュージーランド政府のウェブページに、それぞれの地域の投票数の表のリンクがあります。

それを見てみると、特に『大麻』の国民投票に関しては、大都市で賛成者が多いですね。

 

選挙後に行われた調査から得られた、下に示した年齢別のグラフを見ると、若者に賛成者が多いので、若者の多い都市部で賛成者が多いと言うことですね。

(こちらのグラフはSpinoffのサイトより引用)



最後に

『安楽死』に関しては、この先、政府がどのようなシステムを提案してくるのか、興味深いところです。

(まあそれ以前に、新しい政府がニュージーランドの基本的な医療システムについて、どのように改善してくれるかに、私は最も興味があるのですが。)

 

『大麻』に関しては、今回の結果を鑑みると、また何年後かに国民投票が行われることもあり得そうです。

今回の国民投票が、多くの国民にとって真剣に『大麻』について考える機械になった事を願っています。