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安楽死に関するニュージーランドの国民投票 2020年

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2020年10月に、ニュージーランドでは2つのreferendum 国民投票があります。

これは、ニュージーランドでの次の政府を選ぶ選挙と同時に行われます。

 

今回の国民投票は2つあります。

1つはEnd of life choice 人生の終末期における選択(安楽死)に関するもの

もう1つはCannabis legalisation and control 大麻の合法化とコントロールに関するもの

です。

 

『もう、賛成するか反対するか決めたよ』という方もいらっしゃると思います。

『大体どんな事かはわかるけれど、詳しい事はよくわからないから、決めがたい』という方も多いと思います。

 

今回の記事では、End of life choice 人生の終末期における選択(安楽死)の方について、G and A形式で説明します。

(ニュージーランド政府の国民投票に関する記載には『euthanasia 安楽死』という言葉はありませんが、この『終末期における選択』がとの様なことを指すのかをイメージしやすくするために、この記事には『安楽死』という言葉も使っています。)

 ご自分で調べて、ちゃんと理解したい、という方は

今回の国民投票に関するニュージーランド政府のウェブサイト法案そのものを参照してください。



End of life choice 人生の終末期における選択(安楽死)法案 Q & A

Q. これは何を目的にした国民投票なのですか?

A. これは、『余命が限られた病気にかかっている人が、自然死を待たずして、自分の命を終わらせる』という選択肢を法的に許すか、否かについて、国民の意向を確認するものとなります。

この法律が通って、効力を持つ様になれば、患者さんの選択による死に関与した医療従事者は法的に罰せられないということにもなります。

Q. 国民投票は初めての経験なのですが、どの様に行われるのですか?

A. この国民投票は2020年10月に、次のニュージーランド政府与党を選ぶ選挙に行った際に、同時に行われます。

ご自分の支持する政党や代議士を選ぶ選挙用紙と共に、国民投票の用紙も渡されます。

End of life choice actが法として効力を持つ様になることを『支持する』または『支持しない』のどちらかを選びます。

 

もしも全投票者の過半数以上が賛成すれば、その結果の発表の12ヶ月後に法律として効力を持つことになります。

(このEnd of life act 人生終末期における選択(安楽死)の国民選挙は、過半数の票を得た時点で、法的に効力を持つこととつながります。

これに対し、大麻に関する国民選挙では、過半数票を得ても、自動的に法律としてこうりょくはもちません。

次の政府が、法律として通すかどうか最終的に決めることになります。

 

前者(安楽死)の様に国民投票の結果が直接、法律が効力を持つことに繋がるものををbinding、そうでない後者(大麻)の様なものを、non-bindingまたはindicative の referendum 国民投票と言います。) 

Q. どの様な人(患者さん)がこの終末期の選択をできるのですか?

A. この法案が有効になった時に、死を選べる人はどの様な人でしょうか。

患者さんがこの終末期の選択をするには

  1. 18歳以上
  2. ニュージーランドの国民または永住権保持者
  3. 病気により6ヶ月以内に死亡することが予想される
  4. 身体能力の大幅かつ継続的な悪化がある
  5. 緩和できない、耐え難い苦しみを体験している
  6. 死に至る支援について情報に基づいた決定を下す能力がある

以上の、すべての条件を満たすことが必要です。

障害がある人、精神病または高齢という理由だけでその他の死に至る病気がない人は、対象になりません。

また『海外から旅行者としてやってきて、ニュージーランドで安楽死をする』ということもできません。

6の『死に至る支援について情報に基づいた決定を下す能力がある』という事項について、この『能力』というのは

  • 「死に至る支援(安楽死)」についての情報を理解できる
  • 自分で決断するために、「死に至る支援(安楽死)」についての情報を記憶することができる
  • 決断を下すために、色々な情報を使い、比較検討できる
  • 自分の決断を何らかの方法で伝えることができる

となっており、痴呆の進んでいる人や、植物状態で意識のない人は除外される訳です。

Q. この「死に至る支援」にはどの医療従事者が関わることになるのですか?

この「死に至る支援(安楽死)」のプロセスの最初は、患者さんが自ら、診療にあたっている医師に「死に至る支援(安楽死)」の選択について尋ねることから始まります。

考えられるシナリオとしては、患者さんが自分のGP、または診療に当たっている病院の専門医、またはホスピスの医師にアプローチする、というものです。

その医師とは別に、2人目の医師として”independent doctor"も患者さんの適格性を判断しないといけません。

この2人目の医師は、1人目の医師がSupport and Consultation for End of Life in New Zealand gropeに申請して、決められる様です。

この”independent doctor"というのが、他の施設の医師でないといけない、いうことになるのか、その患者さんの治療に関わっていない医師ということになのか、法案の文面からはよくわかりません。

精神的に適格であるかどうかが不明瞭であれば、これに加え精神科医の判断も必要になります。

とにかく、2人(または3人)の医師が関わることになります。



Q. この法案での「死に至る支援(安楽死)」は実際にはどの様な方法で行われるのですか?

「死に至る支援(安楽死)」は、患者さんが致死量の薬物をとることによっておこなわれます。

患者さん自身が薬物を自分に投与するか、医者(またはナースプラクティショナー)が患者さんに薬物を投与するか

また

内服薬を使うか、注射(静注になると思いますが)を使うか

の組み合わせによって、4つの選択肢が可能です。

つまり

  1. 患者さんが自分で薬を内服
  2. 患者さんが自分で注射
  3. 医師(またはナースプラクティショナー)が患者さんに経管的に(胃管ということになるのでしょう)内服薬を投与
  4. 医師(またはナースプラクティショナー)が患者さんに注射

私の現時点での想像では、実際に安楽死が行われることになれば、多分患者さんは注射を選ぶケースがほとんどであろうと思われます。

Q. 安楽死が行われるのはどこですか?

『患者さんが自分で、場所と日時を選ぶことができる』と法案には謳われています。

多くの場合は自宅か、ホスピスということになるのでは、と思います。

(さすがに、『昼間の12時に、スーパーマーケットの前で』とかいう選択は許されないでしょう。勿論そんな場所を選ぶ人は現実的にはいないと思いますが。)

Q. もしも途中で患者さんの気持ちが変わったら、『安楽死』の希望を取り下げることはできますか?

これは、勿論、どの段階であっても可能です。

Q. 安楽死を望んでいない患者さんが、周りからプレッシャーを感じて、安楽死を選んでしまう可能性はないか、心配です。

これは、この法案に反対な人の懸念の一つであろうかと思います。

法案の中には、これを意識して

「安楽死」については、患者さんから医者に話を始めることはできるが、医師が「安楽死」について示唆したり、患者さんに提案したりすることはできない、という記載があります。

ということは、たとえば患者さんの家族が

「こんなに(患者さんが)苦しんでいるから、本人に『安楽死という選択もあるのだよ』と話してもらえますか?」

とか言われても、医師から患者さんに『安楽死』という話を持ち出しはしない、ということです。

また、いずれの時点においても、関与する医療従事者が「患者さんが他の人からプレッシャーをかけられて、安楽死を選んでいる」と感じた時点で、「安楽死」へのプロセスを中止することになっています。

Q. 18歳以上ということは、18歳の自分の子供が「安楽死」を親の私に相談なく決められるということですか?

その通りです。

ニュージーランドでは16歳になれば、親の承諾なくいろいろなことが決められます。例えば、親が離婚していたら、どちらの親と一緒に住むか、または家を出るかなどです。

18歳はそれよりも年上でありますが、『安楽死』という命に関わる選択に関して『18歳は若すぎるのでないか』という懸念は聞かれます。



私の選択は?

私はずっと「安楽死は選択肢としてあるべきだ」と思っていました。

現在でも基本的な考えは変わりません。

自分が病気の末期になった時、また自分の家族が苦しんで死を待つ状況になった時、苦しみに自分で終止符を打つ決定ができるという選択肢は、あってもいいと思うのです。

ただ、医療従事者側の立場から考えると、特に現在のニュージーランド医療の状況を鑑みると、色々と不安があります。

医療従事者の懸念は?

『予後が6ヶ月以内』という事を判定するのは難しい

患者さんの必要条件の一つに『病気が末期の状態で6ヶ月以内に死ぬことが予想される』というのがあります。

余命が6ヶ月以内かどうかというのは、はっきり言えないケースがあることは予想されます。

もしも医師が『6ヶ月以上生きられる確率もあります』と言って、『安楽死』を望む患者さんの願いが聞き入れなかった場合、医師と患者の信頼関係が壊れることも考えられます。

医師は患者を救うために仕事をしているのに、患者が死ぬのを手伝うのは倫理的に同意できない

この様な考えで、この『安楽死』の法案に反対している医師も少なくありません。

もしも医師が『安楽死』に反対であれば、自分の患者さんが『安楽死』を希望してきた場合に、関与する医師になる事を断ることはできます。

その場合はSupport and Consultation for End of Life in New Zealand groupに申請して、代わりの医師を見つけてもらいます。

ただこの様な場合でも、「患者さんの希望をききいれてあげられなかった」ということで医師と患者の関係が壊れてしまうことも考えられます。

この『安楽死』のプロセスを、現在のニュージーランド医療現場に持ち込むための時間とお金はどこから出るのか

ニュージーランドに在住の方ならよくご存知だと思いますが、現在GPの予約を取るのも1週間待ちとか、公立病院での診察は6ヶ月待ち、とかいった状態です。

この『安楽死』のプロセスは、医療従事者の多大な時間を取るものです。

どう考えても、現在のGPの仕事の中に『安楽死』の介助を加えるのは、困難です。

初期段階での話し合いの時間は勿論のこと、例えば、日曜日の夜の8時に、自宅で『安楽死』を希望する患者さんに、どの医者が対応できるか。

もしかすると、『安楽死』専門の医師やナースプラクティショナーが出てくるのかもしれませんが。

また、医療従事者は仕事の内容とそれに使った時間に見合った報酬を、受け取る必要があります。

それを患者さんが払うのか、政府が捻出するのか。

その辺りは現時点では全く決まっていません。

『安楽死』に関わった医療従事者が、完全に守られているわけではない

『安楽死に関与した医療従事者は法的に罰せられることはない』といっても、『プロセスのどこかで医師が法に従わなかった』という申し立てが誰かからあれば(例えば家族など)、その医師に対して禁錮、罰金刑や懲戒手続きが取られる可能性はあります。

 

以上の事などを考えると、特に医療従事者にとっては、ただ倫理的に『安楽死』に賛成か、反対か、というだけでなく、色々考慮する要素があるのです。

私は、まだ決めかねています。

最後に

この記事が、少しはEnd of life choiceの国民投票に関し、皆さんの理解を深め、投票時の決断の助けになればありがたいと思います。

大麻の国民投票に関しても、投票に間に合う様に、記事を書く予定です。

ただ『みんなが賛成しているから、私も賛成』とか『なんとなく心配だから、反対』とかでなく、皆さんがご自分自身で色々調べ、責任を持って投票していただけたら嬉しいです。

 

最後に、ニュージーランドのGPが『安楽死』に賛成の医者、反対の医者、マオリやパシフィックの視点から、弁護士などを集めて討論したビデオがあるので(英語ですが)、興味がある方はご覧ください。

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