私が医学部を出た頃は、まだコンピューター自体が珍しい時代で、同僚がマックを購入して興奮していたのを覚えています。(年齢がばれますが。)
今は何でもインターネットを調べれば情報が得られる、便利な時代になりました。
ただいろいろな質の情報が出回っているので、信頼できるソースがどれなのかを知っていることが大切です。
ということで、今回は、ニュージーランドの医師達はどのようなウェブサイトを使っているのかを紹介します。
医師が診療のために使うサイト
UpToDate
ウィキペディアによると、UpToDateはWalters Kluwer と言うオランダに head quater があるグローバルな会社の一部門のようです。
UpToDateは1992年に、腎臓内科の情報から始まったということですが、今日では様々な疾患を網羅しており、エビデンスに基づいた情報が常に更新されています。
UpToDate は有料で、1年か2年の単位で購読しないとフルには使用できないのですが、これは本当にお金を払う価値があるサイトだと思います。
(講読料は$499/年、 $899/ 2年ですが、グループで購読すると安くなります。私の職場もクリニックとして購読しています。)
患者さん用のインフォメーションもあります。
60日間は、気に入らなければ無料で購読をキャンセルできるようなので、是非試してみてください。
Best Practice Advocacy Centre (BPAC)
これはニュージーランドのウェブサイトです。
BPAC自体は、ニュージーランドの医療従事者に継続した教育を提供する事を目的としたNPOです。購読は無料で、誰でもできます。
BPACのonlineジャーナルもあり、定期的に、疾患についてエビデンスに基づいた診断、治療について詳しく特集を出しています。
ニュージーランドの医療事情に合わせたところもあるので ( 例えば、どの薬はニュージーランドで入手可能かとか、どの薬は政府からの援助があって処方箋が有れば安く買えるとか )、日本では当てはまらない項目もあるかと思います。
ただし、基本的な記述はエビデンスに基づいたもので、UpToDateよりも読み易いので、興味深いトピックスを見つけたら、英語の練習だと思って読んでみる価値ありです。
DermNet NZ
これもよくお世話になっています。
DermNet NZ にはクイズのページなど、自分の勉強に使えるものがあるので、時間がある時にそんなクイズをしたり、掲載されている疾患のリストを見て、あまり知識がない疾患の記事を読むと言うこともあります。
「どこかでこんな皮膚疾患を学んだ気がするけれど、何という病名だったっけ」とか「このような良性の黒子は何に分類されるのか忘れた」とかいう時に、辞典のようにも使えます。写真がたくさん載っているので、似たような疾患を見つけて、診断の助けにすることもあります。
"Browse"のページには、皮膚疾患が起こる場所や、起こる年齢別によく見られる疾患一覧を載せてあるので、「この耳の皮膚疾患は何かな」と思ったら、”ear"をクリックして、耳によく見られる疾患の中から鑑別診断するということも可能です。
患者さんに、印刷して情報提供に使うこともよくあります。
患者さんへの情報提供に使うサイト
Health Navigator
これは最近まとめ上げられた、ニュージーランドのウェブサイトです。
常にアップデイトされています。
このウェブサイトには患者さんの為に、主な疾患や病状毎に簡潔な説明が、分かり易い言葉を使って書いてあります。
医療従事者のためのリンクもあります。
最近は出来るだけ地球上の資源を節約するように、患者さんにはリンクをメールやテキストで教えることが多いですが、必要であればトピック毎にこのウェブサイトから印刷するのも簡単です。
トピックは疾患だけでなく”Staying safe in the garden” とか “Just because you're thin, doesn't mean you're healthy” とか読み物として面白そうな物が沢山あります。
単に病気について解説するだけでなく、何にはエビデンスがあり、何はエビデンスがないか (例えば、風邪には抗生物質は効かない。かえって耐性菌が出来て、将来問題になる可能性がある。ビタミンCは風邪の予防にはならないなど)という事もカバーしており、患者さんの教育に役に立ちます。
平易な英語なので、英語が非常に得意でない方もチャレンジできると思います。
Patient Info
Health Navigator のイギリス版といったところです。Patient info のサイトの方が以前からあるので (以前はPatient uk でした )、私はよくこのサイトの情報を患者さんに渡していました.
現在はHealth Navigator があるので、その必要も無くなりつつありますが、患者さんの教育や理解の程度によって、Patient infoの方が適切なレベルの説明があることもあります。
医師が勉強のために使うサイト
GoodFellow Unit
これは Goodfellow 家 の人が General practitionerの教育を支援するために大学と共同して作ったらしいです。(いい名前ですよね。)
このサイトにはE-learning、webinar、podcastなど様々な形式のモデュールがあります。私はよく家でご飯食べながら、webinar や podcast を聞いています。
このサイトの e-Learning を使うには、無料のメンバー登録をしないといけませんが、誰でも簡単に登録できます。
(医療従事者でなくても、ニュージーランドに住んでいなくてオーケーです。)
Webinar や podcast は登録の必要はないようです。
この webinar や podcast はその時々のニュージーランドの状況にあったものがアップされていて、日々の患者さんの診療にとても役に立ちます。
例えば、ガイドラインが新しくなった時には、主な変更点やその根拠は何かとか。医療用大麻が最近ニュージーランドでは話題なので、それについての説明とか。
このサイトは、Listening comprehension の練習がしたい方にもうってつけだと思います。
BMJ learning
これは British Medical Journal のウェブサイトの一部で、医療従事者の教育目的のモデュールが数多くあります。
これも有料のサイトなのですが、ニュージーランドの general practitioner の学会のメンバーは無料でアクセス出来るので、私も時々使っています。
やはりイギリスのウェブサイトという事で、ニュージーランドの状況には当てはまらない事もあります。そのため、最近は私は Goodfellow Unit のモデュールで勉強する事の方が多いです。
まとめ
今回は、ニュージーランドのGP がよく使っているウェブサイトを挙げてみました。
英語と医学の勉強が出来、一石二鳥ですので、宜しければ覗いてみてください。