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General Practitioner NZの医療情報

『Phone Triage 電話によるトリアージュ』って何?利点・欠点も説明しました。

今回も、GPクリニックで行われていることの1つを紹介しますね。

みなさんの登録しているGPクリニックでも、すでに行われているかもしれません。

 

『電話による トリアージ Phone triage』です。

 

今回2019年5月に京都で開かれる学会で、私の働くクリニックで行われている、この『電話による トリアージ Phone triage』について私が発表することになったので、ちょうど良い機会として、ここにも載せておきます。



『電話による トリアージ Phone triage』は、なぜ始まったの?

皆さん、調子が悪くなったり、怪我をしたりして、医者に診てもらいたい時はどうしますか?

クリニックに電話して予約を取りますよね。

 

step
1
クリニックに電話

step
2
GPの当日の予約枠に余裕があれば予約

 

step
3
当日の予約枠がいっぱいなら救急外来や救急クリニックへ行く

これが今までのパターンだったと思います。

 

この方法で問題なのは、もしも自分のクリニックがいつも当日に空きがないという状態だと、急に調子が悪くなったりした場合は、いつも救急外来へ行って、知らない医者に診てもらわなければならなくなるということです。

 

もちろんクリニックには慢性疾患で、あらかじめフォローアップを予約している人もいるので、最悪の場合そういう慢性疾患の人だけでいっぱいになってしまう可能性があります。

 

また、空きの枠があっても、冬になると風邪の人が多く、みんなが

医者にかからないと!

と考えていると、鼻水と咳の患者さんだけで、すべての空きが埋まってしまいます。

風邪にはGPができる治療はありません!

 

このようなシステムは、限られた医者と患者さんの時間とお金を、上手に使っているとは言えませんよね。

 

本当に当日、かかりつけのGPに診られるべき人が、優先してGPに予約を取れるようにするにはどうすればいいか?

GPにかかる必要がないような人が、無駄に時間とお金を使わないで、問題解決するにはどうすれば良いか?

 

こんなことから『電話による トリアージ Phone triage』が始まったのです。

 

(これは、全国的なヘルスケアシステムの改善への動きの一つであり、私の働くNorthlandのクリニックだけの判断で始めたのではありません。)

 

『電話による トリアージ Phone triage』とは?

step
1
まず患者さんがクリニックに電話

step
2
電話交換手が「当日の予約を希望するかどうか、GPと話をして決めたいか」患者さんに質問

step
3
当日の予約を希望かGPと話をしたい場合は、電話交換手が『Phone triage』のリストに患者さんの名前と電話番号を残す

step
4
GPの1日の予定の中に『Phone Triage』に当てる時間枠が組み込まれており、その時間がきたらGPは『Phone Triage』のリストの患者さんに、順番に電話をかけていく

step
5
話をしていてGPが(この人はクリニックで診察が必要)と判断した患者さんや、そうでなくても患者さんがどうしてもGPにクリニックで話をしたい場合は、緊急性をGPが判断し、患者と相談の上、当日や翌日以降に予約を入れる

 

GPの1日の予定表の中に、このように『Phone Triage』で当日の診察が必要と判断されて患者さんのための枠が一定数確保してあるので、ほとんどの急を要する患者さんは、かかりつけのクリニックを当日受信できることを目指しています。

 

電話をかけてくる人の中には、GPと話をして、「もう少しこのまま様子を見ても大丈夫。多分だんだん良くなるでしょう」(例えば風邪とか感染性の胃腸炎とか)という説明に合意して、クリニックでの診察を要しない人が少なからずいます。

 

他には

  • 風邪をひいて仕事への診断書が必要なだけの人、とか
  • 腰痛がひどくなって手持ちの薬があまり効かないので、他の種類の痛み止めを処方してもらえば、とりあえず満足な人

とかいます。

(処方箋や診断書が必要な場合は、その分の費用が請求されますが、話だけして様子見になった場合は、患者さんにお金は請求されません。)

 

こういう人たちも、以前のシステムではみんなGPと予約を取って診察に来ないといけなかったわけです。

 

『Phone Triage』のシステムが始まってからは、クリニックでの診察を必要としない人がクリニックに来る頻度を減らしその分、診察をその日に必要とする人が、かかりつけのGPにかかることができる率を高くしました。



『電話による トリアージ Phone Triage』にかかる時間など

2018年のデータですが、GPが『Phone Triage』することにより、

診察する必要なく解決した症例は、全体数の41%

電話をしてきた症例の53%は、当日診察の予約がされました。

 

GPがトリアージにかけた時間は、平均 3分42秒/症例でした。

 

トリアージは『電話による診察』とは違うので、診察がいるのかいらないのかを素早く判断することが非常に大切になります。

もう少し短い時間で1症例が処理できれば良いのですが、なかなか難しいです。

 

『電話による トリアージ Phone triage』の利点は?

すでに上の説明の中にも書きましたが、

患者さんにとっては

  • 必要のない診察に来ることがなくなり、時間とお金を節約できる。
  • 診察や「ペイシャントポータル」以外の方法で、GPからアドバイスがもらえる

 

GPやクリニックにとっては

  • 本当に診察が必要な患者さんを見極められるので、そうでない患者さんで予約がいっぱいになって、GPが当日診るべき患者さんが救急のクリニックに行かざるをえないという状況を避けられる
  • ニュージーランドはキャピテーションというシステムで、政府からお金がクリニックに払われており、このシステムでは、患者さんをクリニックで診れば診るほど、クリニックの利益は減ってしまう。不必要な診察をしないことは、クリニックの経営に役立つ。

というような利点があります。

『電話による トリアージ Phone triage』の問題点は?

このシステムに不満がある患者さんから聞くのは

GPが患者さんに電話をかけた時に、患者さんが電話に出られない状況だったり、患者さんが携帯の電波の届かないところにいたりすると、こちらから連絡が取れず、いつまでたってもトリアージが受けられない

という声です。

 

また、GPが電話した時に、患者さんがすでに仕事に出かけていると、GPが電話をした時にプライベートに話がしにくい、ということもあります。



最後に

どのシステムも100%すべての人が満足する、ということは有り難いと思います。

私個人的には、この『Phone Triage』システムを使う利点は多いと思います。

特にこの先、人口の高齢化とGP数の減少が予想されるので、今までと同じやり方ではプライマリーケアが成り立たなくなる可能性があります。

この次のステップとして、私のクリニックでのデータを解析しつつ、患者さんの声を取り入れ、更にシステムを改善していきたいと思います。

 

何かご意見があれば、「お問い合わせフォーム」を使って連絡いただけると、とても嬉しいです。