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ニュージーランドの生活

いじめ ニュージーランドの自慢できない現況

更新日:

日本人が住みたい国のリストに載る国、ニュージーランド。

美しい自然、おおらかな人々。そんなイメージを持っている方も多いと思います。

でも残念ながら、ここにもいじめはあります。

いじめって、他人が自分の影響を受けているのをみて、自分の力を目の当たりにする悦びが原動力なのでしょうか。(他人に影響を与えるならば、何かポジティブな影響を与えてほしいですよね。)

実はニュージーランドのいじめは、私が思っていたよりも深刻なようです。

では、ニュージーランドにおけるいじめの状況を見てみましょう。



若い世代のいじめ

The Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD)と言う団体が、所属する36カ国とその他の国の15歳の子供にアンケートをとったまとめであるProgramme for International Student Assessment (Pisa) というレポートがあります。

2015年のPisaによると、アンケート結果が得られた51カ国の中でニュージーランドは何と2番目にいじめの経験を訴える子供の割合が高かったのです。

(一番はLatriaのいう東欧の国でした。)

 

私の予想外に、日本では、いじめを訴える子供の割合は少なかったのです。

こちらで暮らしていると(ニュージーランドの子供達は勉強に追われずに、楽しい生活を送っているなあ)なんて思っていたので、この結果は本当に驚きでした。

ただ、私の住む街で近年若い人たち(主にティーンエイジャー)のいじめが関与した自殺が相次ぎ、確かにそう言われると、Pisaの結果も理解できます。

最大手の新聞NZ Heraldにも、若者のいじめに関する記事はよく見かけます。

 

最近の若者自殺の増加に応じて、この街でもいろいろな対策がなされました。

私の街のPrimary health organization (PHO)は若者を対象にしたyouth mental health teamを作り、GPなどの紹介、または患者自身が連絡することで無料でカウンセリングを受けられるようになっています。

他にもほとんどの高校には学校と契約しているカウンセラーがいて、学生が予約をしてカウンセリングが受けられるようになっています。

私の街の警察に、この様ないじめに対する若者達への教育や、いじめの事例の解決を専門にするチームが設けられ、チームの警察官は、学校を訪れて、いじめは犯罪である事などを子供達が理解できる言葉で説明したりします。

 

ソーシャルメディアを使ったいじめ、いわゆるCyber bullyingは、ニュージーランドでも大きな問題です。

娘の経験してきた学校では学生(小学生を含む)と親に安全なインターネットの使用に関する同意書を署名させています。

(多分、今はほぼすべての学校で、こういうことがなされていると思われます。)

統計的に見ると、ニュージーランドの若者の自殺は世界の中でも非常に高いようです。

自殺のすべてがいじめによるものではないでしょうが、事例としては、いじめが原因で自殺した学生の記事はよく目にします。

ニュージーランドの国を挙げていろいろ努力がされていますが、現在のところ若者の自殺率は減っていません。

職場でのいじめ

職場でのいじめも問題です。

私のクリニックでもかなり頻繁に、職場でいじめにあって、ストレスで心身的に病んでしまい、医師の診断書をもらいに来るというケースに出会います。

ほとんどの場合は職場のボスが、自分を正当に扱ってくれない、与えられる仕事の量が、勤務時間に対して多すぎて、それをボスに話しても改善されない、と言う形が多いです。

もちろん、クリニックで患者さんと話をするときは、患者さん側の話しか聞きませんので、実際に職場に行って他の人の見解を聞くと、ニュアンスがかなり違うということはあり得ると思います。

私の仕事は患者さんの健康管理の手伝いをすることで、実際にどんないじめが行われているか調査することではありません。

ただ患者さんの話に共感を示しながらも、客観的に話を聞くことは大切だと思います。



医師の世界

医学界も例外ではありません。

医師を対象にしたthe Association of Salaried Medical Specialists (ASMS)の調査でも、NZ heraldと言う新聞が独自に行った医学生を対象にした調査でも、多くの医師が(上級医師から)いじめを受けたことがあるという結果が出ています。

ASMSのレポートで示されたように、海外から来た医者がいじめにあう率は、ニュージーランドの医学部卒業者の率より高いです。

NZ heraldに掲載された記事にある例では、指導医が中国人の医学生の名前をちゃんと呼ばず、"Bill" とか"Bob"と呼んだとか、マオリの学生を”Student”と呼んだとか。(確かに中国人やマオリの人の名前は、時に読み方が難しいのは私の経験からも理解できますが。)

また中国人の医学生に「犬を食べるのか」と質問したとか。

他には女子学生に対するセクハラ。

この記事を読んだ限りでは、いじめをするのは主に上級医師、いじめられるのはアジア人、マオリなどのマイノリティーと女性、と言う図が見られるようです。(ということは上級医師のほとんどは白人男性。)

私の経験したいじめは、まさにこの典型でした。

個人的経験

最後に私の個人的経験をお話しします。

それは、私がニュージーランドの病院で初期研修をし、外科を回っている時でした。

外科のconsultant(上級医師)とregistrar(後期研修医)とhouse officer(初期研修医)の私3人で朝の回診した際、結腸の術後間もない患者さんが発熱しており、縫合不全による膿瘍形成が疑われました。

consultantが「CTスキャンを頼むように」とregistrarに指示しました。

回診後にregistrarが私に、CTのフォームを記入して私に手渡し、放射線科医に至急で頼む様に言いました(house officerはこんな仕事ばかりです)。

フォームにはregistrarによって、簡単に手術の内容、日付け、CTを頼む理由などが書き込まれており”triple study”と加え書きしてありました。

(tripleは3つという意味ですが、この場合、経口、経肛門で造影剤を入れ、静注でも造影剤を入れるという意味。)

 

放射線科に行くと、今日の当番医はイギリス人のDr.D。いつも私が画像診断の申し込みに行くと、不機嫌そうな応対をします。

(あー、いつも優しいB先生だったら良かったのになー)なんて思いながら、Dr.Dの部屋に行来ました。

Dr. Dは画像のレポートを製作中。

その邪魔をする事を謝罪し、CTのフォームを渡して患者の説明をし始めると、私が話を始めて30秒も経たないうちに「Triple studyにするかどうかは私が決めるんだ!!」と、Dr. Dの怒り最高潮。

その後5分以上、グダグダと文句を言われました。

その日私は外科のオンコールhouse officerだったので、そのポケベル(今もまだ日本で使われていますか?世代が知れますね)を携帯していました。

文句を言われている間に、そのポケベルが鳴りました。

 

(どの部署からかな)とポケベルに目を向けると、Dr.Dが「話をしている時にポケベルなんか見るな!電源を切れ!!」と更に、怒りまくり。

ポケベルの番号は救急外来だったので、トラウマ(外傷)かなと思いつつも、何を言う事も身動きする事も出来ず、じーーーーーっと我慢しました。

果てしなく長く感じたこの時間にも終わりが来て、Dr.Dから解放された後、隣の救急外来に走っていくと、今度は救急外来の看護婦に「何度も呼んだのに、何処にいたの⁉︎ 交通外傷の患者さんが運ばれて来たのよ!」とまた怒鳴られました。

 

・・・・・・・・・・・

 

不覚にも涙が出始めて止まらず。

たまたま救急外来にいた私の同僚が、私の異変に気づき、私を別室に連れて行き、私の代わりに交通外傷の患者に当たってくれました。

暫くすると彼女が戻ってきて、私が彼女の質問に対して事情を説明。

彼女が今度は、救急外来のsenior registrarに状況を説明した様でした。

 

最終的にはDr.Dが非公式に私に謝りました。自分で悪いと思ったからではなく、多分そのsenior registrsrが彼に文句を言ったのだと思います。

(謝られてもね。こういう人間はもう信頼できないです。)

 

何人かの研修医に、公式に苦情を出すべきだと言われましたが、この先もDr.DにはCTとかお願いしに行かないといけないでしょう。

結局悩んだ末、苦情を提出しませんでした。

ただ一つ良かったことは、Dr.Dは私に謝罪した後は、私が何かを依頼に行ってもかなり快く引き受けてくれる様になった事でしょうか。

(Dr.Dはconsultantが頼みにくると、以前からにこやかに引き受けていたんです。

相手の肩書きとか人種とかで態度が変わる人間は本当に信用できません。)

 

でも、後になってから、やはり正式に苦情を出すべきだったと思いました。

先のASMSのレポートに”約70%のいじめにあった医師は、正式には苦情を出さなかった”とあります。主な理由は、「苦情を出してもサポートしてもらえないだろうと思った(43.5%)」「苦情を出したら状況が悪化するのが心配だった(42%)」でした。

残念だったのは、正式に苦情を出した人の中で「苦情を出した結果、いじめが無くなった」のはたったの6%。30.8%はの人は「苦情を言っても、何も起こらず、そのままいじめが続いた」と言うことでした。

ひどい結果です。

でもね、やっぱり、何かを変えたかったら、訴え続けるしかないです



まとめ

いじめをする人は何か精神的に満たされていないものがあるのか、パーソナリティに依るのか、環境の要因なのか。

家庭内暴力や貧困な生活が、犯罪に繋がるのは知られていると思いますが、もちろん全ての犯罪者が、そのような環境で育ってきたわけではありません。

いじめも同じで、経済的に恵まれた環境で育った子供で、両親は良識のある、感じの良い人達でも、その子供が他の子供にいじめをしている事もあります。

正直言って、この世の中から戦争、テロ、汚職などがなくならないのと同じで、いじめが完全になくなることはないと思います。

でも、いじめの頻度を少なくすることと、被害にあった人をより強くサポートすることは可能だと思います。

プライマリーケアに従事する医師としては、問題が起こってからの対処でなく、予防に重点をおきたい。天然痘のようにこの世からいじめをなくすことができたら、どんなに良いか、と思います。

それには、1. 教育、2. 被害者へのサポート、3. いじめをしている人の精神的な要因を解析し、将来この人がいじめをしないように手助けする(犯罪の再犯をなくすように更生援助をするのと同じです)などが必要だと思います。

一個人としてできる事は限られていますが、それでも、このニュージーランドのいじめの現状が改善されるように、私ができる事を少しずつ続けていきたいと思います。

 

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