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お知らせ 医療トピック

2025年10月現在、ノースランドを中心に麻疹の感染症例が出ています

麻疹

現在ニュージーランドのノースランド地域での麻疹の集団感染が発生し、2025年10月3日までに9例、また、ノースランドの症例とは関係ない麻疹のケースが一例クィーンズタウンあたりで確認されています。

今回の麻疹のケースに関する情報

  • 発生場所はノースランドのKerikeri (ケリケリ)地域。オークランドからずっと北に行ったノースランドの中でも北の方です。

  • クィーンズタウンのケースも含め、最初の感染源となった症例は、海外で罹患したようです。新たに感染した症例のうち、少なくとも一人は、麻疹の予防接種を受けていなかったことが明らかになっています。

  • Kerikeriにある病院救急部門、Kerikeri高校地元の薬局などが、感染者が行った場所とされていますので、同じ頃にこれらの場所へ行った人は注意が必要です。

  • テ・ファトゥ・オラ(ニュージーランド保健省)は警告を発し、指定された時間帯にこれらの場所にいたすべての人に、自身の予防接種歴を確認し、麻疹の症状に注意するよう呼びかけています。

  • 特に今まで予防接種を受けたことがなく、かつ患者と接触した可能性がある人は、MMR(麻しん・おたふくかぜ・風しん混合)ワクチンを接種するのに「遅すぎる」ことはありません。今からでも考慮してくださいね。

「はしか」はどれだけうつりやすいか?

「はしか(麻疹)」は、空気感染する最も感染力の強い感染症の一つです。

その感染力は、1人の患者から12〜18人にうつると言われるほど。これは、同じく感染力が強いと言われるインフルエンザ(1〜2人)や、新型コロナウイルス(オミクロン株初期で8〜10人程度)をはるかに上回ります。

免疫がないと、感染者と同じ空間にいるだけで、90%の人は感染してします。

「はしか」を知る〜症状・感染力・合併症のリスク〜

「はしか(麻疹)」は、軽視できない重篤な感染症です。

症状
10〜12日の潜伏期間の後、高熱や咳、鼻水といった風邪のような症状で始まります。口の中に「コプリック斑」という特有の白い発疹が現れた後、全身に赤い発疹が広がります。

感染力
症状が出るから、周囲にうつす危険性があります。特に、咳やくしゃみが始まる「カタル期」が最も感染力が強く、発疹が出てから3〜4日後まで周囲にウイルスを撒き散らす可能性があります。

合併症と後遺症
肺炎や中耳炎を起こすことが多く、約1,000人に1人の割合で脳炎を発症し、死亡や重い障害(知能障害、運動障害)が残る危険性があります。また、ごく稀ですが、感染後数年から十年以上経って「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という致死率の高い重篤な脳疾患を発症することもあります。

はしかは「単なる子どもの病気」ではなく、命や人生を左右する合併症のリスクを持つ病気です。

ニュージーランドにおける予防接種率の低下は問題

ニュージーランド、特に麻疹の発生が確認されているノースランド地域では、麻疹に対する予防接種率が公衆衛生を維持するために必要な水準を大幅に下回っていることが、感染拡大の根本的な要因となっています。

具体的な問題点は以下の通りです。

  1. 目標接種率の未達成

    • 麻疹の集団免疫を達成し、流行を防ぐためには、人口の少なくとも95% が2回のMMRワクチン接種を受けている必要があります。

    • ニュージーランド国民、永住者全体の80%が免疫があるとされています。これは目標値を大きく下回り、ウイルスが蔓延するのに十分な隙間を生み出しています。

    • ノースランド地域の5歳未満の子どもにおける予防接種率は61%と報じられており、マオリの子供は50%と更に低いです。

    • これに比べると、日本の接種率は少なくとも90%前後はあるようです。それでも、十分ではないですが、ニュージーランドよりは良さそうです。

「予防接種格差」の問題

  • 接種率は地域や社会経済的なグループによって大きなばらつきがあります。特に、医療へのアクセスが困難な地域や、貧困率が高い地域で接種率が低くなる傾向があります。今回の発生地であるノースランド地域は、このような課題を抱える地域の一つです。

  • ただ私の経験からすると、貧困は直接的にはあまり関係ないと思います。なぜならルーチンの予防接種は無料だからです。また、僻地に住む人のために、パブリックヘルスの看護師が家庭訪問したりもします。

  • ただ、貧困→教育程度の低さ→予防接種の理解がない、とか「子どものケアに関心がない」いう繋がりはあるかもしれません。

⒊ 低い接種率の背景

  • アクセスの困難さ: 医療サービスが遠くにあるなど、物理的・経済的な理由で接種を受けられない家庭が存在すると、政府は言っています。まあ、ある程度の数はこれが理由である人もいるでしょうが、上に説明した理由から、個人的にはこれが主な理由だとは思いません。

  • 情報の混乱と誤情報: 過去の誤った研究を発端とした「ワクチン不安」や、SNS上で流布される誤った情報の影響で、意図的に接種を見送る保護者が一定数存在することが指摘されています。

  • 個人的にはマオリの人の持つ(マオリだけとは限りませんが)、ニュージーランド政府、西洋の医療などへの信頼も大きな問題ではないかと思います。

麻疹に免疫がない人はMMRワクチンを受けることを考慮してください

一度も麻疹のワクチンを受けたことがないとか麻疹にかかったことがない方は、ぜひワクチン接種を考慮してください。
通常2回の接種となっていますが、一回でもかなりの免疫取得が期待されます。

ニュージーランドでは、

  • 18歳未満はビザの種類に関わらず(つまり旅行者や短期の学生でも)

  • 18歳以上は、公共の医療を無料に受けられるビザのある人

はMMRの接種は無料です。

ニュージーランドはこういうところでも太っ腹で、18歳未満なら、ニュージーランドで働いて税金を納めていない人でも、無料でMMRを受けられるようにしています。

日本で受けたら9000円から10000円くらいはするんですけどね。

最後に

もしもあなたが、ワクチンについて不安を持っているなら、医療従事者と話をしてみることをお勧めします。
これからニュージーランドにいらっしゃる方は、もしも、今までにワクチンを受けていなければ、麻疹のワクチンを渡航前に受けられることをお勧めします。