WINZは医学的な理由でフルタイムの仕事が出来ない人や、慢性の病気で医療費がかかる人などのために、経済的な援助もします。
私達GPが、患者さんのためにWINZに手紙を書いたり、診断書を送ったりすることは日常茶飯事です。
もしかすると、あなたもWINZの援助を受ける資格があるかも知れません。
(もちろん、資格があるからといって、WINZに申請しないといけない訳ではありません。
私の患者さんの中にも、病気で働けないけれどWINZとやりとりしたくないから、benefitは申請しない、という人もいます。)
自分に援助を受けられるかどうかの知識があった上で、何を選択するかは、各人の自由です。
ただ、援助を受ける資格があり、お金が必要であったのにのに、資格があることを知らなかったということは避けられたら良いなと思います。申請をしないで、自動的にWINZから援助がもらえる事はありませんので。
(私が妊娠・出産時に知識がなく、IRDからのParental leave payの援助がもらえるのに申請しなかったようなケースです。ご存知ない方はこちらのニュージーランドでの妊娠・出産に関する記事、
-
ニュージーランドでの妊娠・出産 知っておきたい事項をほぼ網羅しました
またはpaid parental leave に関するこのIRDのページを参照してください。)
Job seeker benefit
以前はSickness benefitと呼ばれていたものです。2013年に政府が、unemployment benefit という無職の人が申請できるbenefitと、sickness benefitをまとめてjob seeker benefit にしました。
政府がsickness benefitという名前を取り去った裏には、”sickだから働けない”というネガティブな感覚から、”職が見つけるまでの間の短期間のbenefitですよ”というポジティブな感覚と働く事を当然な事とする考えを人々に植え付けたかったのだと思われます。
元気だけれど職が見つけられない場合も、職があったけれど病気で続けられない場合も、同じくjob seeker benefitを申請するわけです。
医学的な問題のために、週に30時間以上の仕事に就くことが困難な人に対しては、医師がJob seeker benefitを申請するのに必要な診断書を書きます。
このbenefitは、最初の2ヶ月は毎月GPを受診して診断書を書いて貰わないといけません。GPのアセスメントを頻繁に受けて、出来るだけbenefitが長期になるのを防ぐ目的だと思います。
その後は、最高13週まで一回の診断書でカバーする事ができます。
例えばがんと診断されて、治療のために仕事を続けられない人も、最初から13週分は原則的に診断書を書けないので(というか書いてもWINZが1ヶ月分しか認めない)、最初の2ヶ月は毎月GPを受診して診断書を書いてもらうという、理不尽なことになります。
2018年12月現在、このbenefitの受給者には家族構成やパートナーの収入により異なった額支払われます。詳細はこちらのWINZのページを参照にしてください。
GPにかかって診断書をもらっているjob seekerの人は、セミナーに出たりするobligationが免除される事が可能です。
Job seekers benefit を貰いながら仕事をする事も可能です。もしも短時間なら、単発や定期で仕事が可能な人がなんらかの収入を得た場合は、それをWINZに報告し、benefitの受給額から収入を差し引いた額が政府から支払われます。
現在はWINZ のjob seeker benefitの診断書は、オンラインでGPからWINZ に送れるのですが、benefitをもらい始める際は、WINZで予約を取り、GPが書いた最初の診断書を持って、直接WINZの職員と話をしてください。
その際に、他にどれだけ財産があるか、一緒に住んでいるパートナーに収入があるかなど、いろいろな事をWINZ に示す必要があります。
このbenefitの対象になる疾患は多様です。
例えば、癌と診断され、治療を受けるために職を辞めないといけなかったとか、腰を痛めて仕事が出来なくなり、最初はACCが収入をカバーしてくれたけれど、それが止められたとか、最初からACCがカバーしてくれなかったとか。このようなものもありますし、職場でいじめられたとか、パートナーが急に離婚話を持ち出してきて、ストレスで仕事がに手がつかないとか、そんな”Acute reaction to stress”という診断名の事もあります。
とにかく、医学的理由でフルタイムの仕事ができず、収入が少ない場合は、GPを受診して書類を揃え、WINZで予約を取って話をすることをお勧めします。
WINZでは、病気の内容に応じて、無料のトレーニングなどを手配して、できるだけベネフィットをもらっている人達が自活できるようにサポートしています。
日本はその辺りはどうなのかなあと思っていたら、こんな会社を見かけました。
障害者と言っても、身体的な障害だけでなく、うつ病や統合失調症などの問題がある人達もサポートしているようです。
私のところにうつ病でベネフィットの診断書を更新しに来る人達も、(もう少し密なサポートがしてもらえて、1日に数時間から始められるなら、この人が働くのも可能だと思うんだけれどなあ) という人がたくさんいます。
こんな会社がここNZでもあるといいのですが。
Invalid benefit
医学上の問題でフルタイムの仕事が出来ない人の中で、この先2年の間に、1週間に15時間以上のopen emoployement (普通に宣伝されている、誰でも申し込める職)できる様な状態になる事が見込まれない人は、かかりつけのGP と相談してinvalid benefitに申し込む事が出来ます。
(実際WINZのウェブサイトにはInvalid benefitとという名称は見られません。正式にはこれは、job seeker benefit だけれど、2年以内に普通の仕事につける可能性がないから、3ヶ月ごとのGPのアセスメントが入らないもの、という扱いなのだと思います)
Invalid benefitはかかりつけのGPがその旨を、job seeker benefit のフォームに書くのですが、それでおしまいではありません。
そのGPの診断書をWINZがまず審査して、invalid benefitが可能であろう人には、WINZと契約している別のGP(普通は患者さんのかかりつけのクリニックで働いていないGP)を受診します。
そのGPがinvalid benefitが適当と認めれば、2年間はGPに診断書を定期的に書いてもらう必要は無くなります。
2年ごとに状態を見て、さらにinvalid benefitを続けるべきか、job seeker benefitに戻れるかを決めます。(一旦invalid benefitを取って、job seeker benefitに戻った人は私は会ったことがないですが。)
Disability allowance
もしもあなたに6ヶ月以上続いている慢性の病気か障害があって、community service cardをお持ちなら(=収入の制限があります)Disability allowanceに申し込む事がができます。
Disability allowanceに含める事ができるものは
- GPの受診料
- 薬代(普通はGPの処方箋を使って購入する薬についての費用)
が、主なもので、その他にも
- 芝刈り(例えば、腰が痛くて芝を自分で刈れないとか)
- 交通機関の代金(車がなくてタクシーやバスを使わないといけない場合)
- ガーデニング、雑草取り、木の刈り込み(これも自分でやれない場合)
また
- カウンセリング(これには、また別の書類が必要で、GPが渡してくれます)
- 医療用のアラーム(これも、別の書類が必要で、GPが渡してくれます)
- 暖房費や電話のコストなど
も入れられるようです。(例えば、電話がないけれど病気のために医者の予約を取ったり、救急車を呼ぶのに電話が必要だとか、医療上の必要性がないとダメです)
1週間に払われる上限がすべてを含めて、$63.22となっています。レシートを取っておいて、実際にどれだけのお金を使っているのかをWINZに示す必要があります。
または芝刈りやカウンセリングなどは、業者の人やカウンセラーに見積もりを書いてもらってWINZに見せないといけません。
Community service card
2018年12月からcommunity service cardがもらえる人の条件が広くなったようです。
基本的には収入が低い人に、このカードを持つことでいろいろな医療関係の割引ができるようになっています。
もしもこのカードを持つ資格があるならば、申請しておくべきでしょう。(収入の上限やどこで使えるかなどはこちらを参照。)
多くのGPのクリニックでは、2018年12月からcommunity service cardを持っている人の受診料の上限が$18.5になりました。(クリニックによっては、政府の提案したこのコントラクトにサインしていないところもあり、そこではこの上限に従いません。)
もともと政府から多くのfunding をもらっているクリニックでは、すでに$18.5よりも受診料が低かったところもありますから、そこでは受診料が変わらない可能性があります。
Child disability allowance
Child disability allowanceはこれは18歳未満のお子さんの世話をしている人が、そのお子さんのためにもらえる経済的援助です。
重篤な障害があったり、病気のために常に誰かがその子供を監視していないと安全でない場合などに申請できます。これは収入や財産の有無に関係なく、申請可です。
このようなお子さんは通常、病院のスペシャリストの管理下にあることが多いので、もらえる資格のある方は既に申請済みであると思いますが。
不明な場合は、上記のWINZのウェブサイト上で、ご自身またはお子さんがchild disability allowanceをもらう資格があるかチェックできるので、そちらからチェックするか、直接WINZにご確認ください。
16歳以上であれば、child disability allowanceをもらう資格がなくても、disability allowanceが申請できる可能性がありますので、WINZまたはGPと相談してください。
(Child disability allowanceとDisability allowanceは異なります。)
最後に
今回は主に、医学的な問題がある場合について書きましたが、WINZは病気の有無にかかわらず、経済的に困難な状況にある人へ様々な援助をしています。
患者さんからは、WINZの職員の対応とか待ち時間とかの不満が聞かれるものの、診断書の送付のオンライン化など、システム的には改善されてきているように思われます。
経済的な援助が必要と感じた時は、一度WINZのウェブサイトをチェックしてみてください。